「銀の匙 Silver Spoon」見たよ


進学校に通いながらも受験に失敗し、「寮があるから」という理由だけで逃げるように大蝦夷農業高校に入学した八軒勇吾。将来の目標や夢を抱く同級生のアキや駒場に劣等感を感じつつ、農業高校の生活に悪戦苦闘の日々。しかし北海道の雄大な自然とニワトリ、豚、牛、馬、そして個性豊かな仲間たちに囲まれた常識を覆す農業高校の生活の中で、八軒は悩み戸惑いながらも次第に自分なりの答えを見つけ始める――。

『銀の匙 Silver Spoon』作品情報 | cinemacafe.net


さいきん「日常」をテーマにした本や映画がマイブームです。

日常を描いた作品なんてありきたりなことばかり描かれていておもしろくないという人もいますが、ぜんぜんそんなことないです。
日常は人それぞれ選び取った日々が積み重ねられてはじめて見えてくるわけですから、自分にとってはつまらない日常でも他人にとっての目新しい非日常だったりするわけです。なので、他人が選び取った毎日が生み出す日常がどんなものなのかすごく興味があるし、たとえそれが平凡に見える毎日だったとしてもそれはそれで「他の人はこういう日常を送っているのか」という発見・確認になります。

さいきんだと「ブリングリング」や「いとしきエブリデイ」がそんな作品でして、どちらもすごく好きな作品です。


本作「銀の匙」は、進学校で勉強漬けの毎日についていくことができなくなって家に居にくくなった主人公の八軒が、全寮制の農業高校に進学して新しい生活に飛び込むというお話ですが、一人の男の子がなんてことのない日々を積み重ねていく中で変化していく様子が丁寧に描かれたよい作品でした。


冒頭。
高校に入った新入生が過ごす生活がそうであるように、知らない者同士のぎくしゃくとしたやり取りや不慣れな生活が新生活を想起させるエピソードとしてあちこちに散りばめられていて、観ているだけでなにやら自分も新入生になったようなドキドキとした気分になります。
慣れないゆえの緊張感を感じさせつつ、穏やかにそしてつらくも楽しくてあっという間に過ぎていく毎日は現実の日常そのもののようで、あっという間に作品に取りこまれてしまいました。

そしてつかみがよかったおかげで、「かわいい女の子との出会い」「新生活に慣れていくことでいろんなことができるようになる喜び」「大事な仲間との別れ」といった出来事にやたらとリアリティを感じたわたしはそのひとつひとつに一喜一憂しながら最後まで飽きずに観ることができました。


一般的には「なにかから逃げること」はあまりよしとされませんし、わたしも正直逃げることはよくないことだと思っていました。
一度何かから逃げてしまうと、逃げる楽さに甘えてしまい、面倒事からはいつも逃げるような甘ったれた人間になってしまうんじゃないかと思っていたからです。

でもこの作品の中で出てきた「逃げてきたことに負い目はあっても逃げた先で出会ったものは悪いものだったか?」という言葉を聞いて、わたしのその考えは間違っているんだなと反省しました。もちろん逃げてばかりいてもしょうがないのですが、でも逃げる方がいいときもあるし、逃げたことで自分にとってよりよい環境が見つかるのであれば、つらい環境から逃げずに戦い続けるよりもよっぽどいいよなと考えを改めるにいたりました。


ちなみに本作は原作未読で鑑賞しましたが、原作好きな人がこの映画を観て「○○のエピソードがない」とか「××が原作とは違う」なんていう文句を書いているのを読んで原作を読まずに観てよかったなと思いました。


@TOHOシネマズ宇都宮にて鑑賞。



(関連リンク)


公式サイトはこちら