最近読んだ本の感想(2014/3/1〜3/9)


3月1日から3月9日まで読んだ本の感想まとめ。

14. 贖罪の奏鳴曲


贖罪の奏鳴曲 (講談社文庫)

贖罪の奏鳴曲 (講談社文庫)

弁護士・御子柴礼司は、ある晩、記者の死体を遺棄した。死体を調べた警察は、御子柴に辿りつき事情を聴く。だが、彼には死亡推定時刻は法廷にいたという「鉄壁のアリバイ」があった―。「このミス」大賞受賞作家による新たな傑作誕生。

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さいきんお気に入りの中山七里さんの著書ということで手にとったのですが、これまた期待以上に楽しめる良書でした。
入れ子構造になった謎が解かれていく気持ちよさをぞんぶんに楽しめるだけでなく、読み手の思い込みを逆手にとった構成は見事としか言いようがありません。こんなにおもしろい作品を書いてしまうと、今後続編や他の作品を書いたときに読み手の期待のハードルがグッとあがってしまうのがちょっと気の毒になるくらい楽しんで読める作品でした。


15. さよならドビュッシー 前奏曲(プレリュード)~要介護探偵の事件簿


『さよならドビュッシー』の玄太郎おじいちゃんが主人公になって大活躍!脳梗塞で倒れ、「要介護」認定を受けたあとも車椅子で精力的に会社を切り盛りする玄太郎。ある日、彼の手掛けた物件から、死体が発見される。完全密室での殺人。警察が頼りにならないと感じた玄太郎は、介護者のみち子を巻き込んで犯人探しに乗り出す…「要介護探偵の冒険」など、5つの難事件に挑む連作短編ミステリー。

http://www.amazon.co.jp/%E3%81%95%E3%82%88%E3%81%AA%E3%82%89%E3%83%89%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%BC-%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%89-~%E8%A6%81%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E6%8E%A2%E5%81%B5%E3%81%AE%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E7%B0%BF-%E5%AE%9D%E5%B3%B6%E7%A4%BE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E3%80%8E%E3%81%93%E3%81%AE%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%80%8F%E5%A4%A7%E8%B3%9E%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA/dp/4796695621


本書は「さよならドビュッシー」であっという間に亡くなってしまった玄太郎じいさんの活躍を描いた前日譚ですが、正直読むまではそんなに期待していませんでした。たしかに「さよならドビュッシー」はおもしろかったのですが、玄太郎さんはほとんどその魅力を出すことなくあっさりと退場してしまったためにいまさらその活躍を読んでもなあ...と思っていたのですが、これがもう超かんちがい。


玄太郎はいわゆる「むかしのひと」というか口の悪い頑固な爺さんでして、そばにいたらうるさそうだなと思うタイプの人なんですが、その実態は不屈の精神と明晰な頭脳をたずさえた聡明な人でして、くわえて幼いころから家族を身一つで養ってきたことで育まれた人生哲学がしっかりと芯を為していて不思議なくらい人を引き付ける魅力をもっているのです。


この本を読み終えると、このあとにおとずれる玄太郎の末路を想像してとても切ない気持ちになるし、「さよならドビュッシー」をもう一回読みたくなりました。


16. いつまでもショパン


いつまでもショパン (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

いつまでもショパン (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

ポーランドで行なわれるショパン・コンクールの会場で、殺人事件が発生した。遺体は、手の指10本が全て切り取られるという奇怪なものだった。コンクールに出場するため会場に居合わせたピアニスト・岬洋介は、取り調べを受けながらも鋭い洞察力で殺害現場を密かに検証していた。さらには世界的テロリスト・通称“ピアニスト”がワルシャワに潜伏しているという情報を得る。そんな折、会場周辺でテロが多発し…。

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「さよならドビュッシー」「おやすみラフマニノフ」に続く第3弾は、ショパンコンクールを舞台にくりひろげられる殺人事件を描いた作品でしたが、これまたおもしろかったです。過去2作ほど音楽に関する描写が強調されてはいませんでしたが、それでもショパンの人となりから楽曲が書かれた背景、そして楽曲の説明、ピアニストの個性を伝える描写など、とにかくこれほど読んでいてその曲が聴きたくなる小説はないんじゃないかというくらい音楽への興味をそそる文章がこれでもかと詰め込まれていました。

ショパンノクターン第二番ってこの曲なんですねー(いまさら)


登場人物が初めて出てくる人もふくめていずれも魅力的なんですよね。すごい!


17. 最近、空を見上げていない


最近、空を見上げていない (角川文庫)

最近、空を見上げていない (角川文庫)

出版社の営業マン・作本龍太郎は、ある日、書棚の前で静かに涙する書店員を目にする。彼女はなぜ涙を流していたのだろう―(「赤いカンナではじまる」)。営業部との折り合いが悪い編集者、旭川から上京してきた青年、夢と現実のちがいに戸惑う保育士…本を通じて作本が出逢った、自らの思いに正直に生きる人たちとの、心あたたまる4つの物語。ときにうつむきがちになる日常から一歩ふみ出す勇気をくれる、珠玉の連作短編集。

http://www.amazon.co.jp/%E6%9C%80%E8%BF%91%E3%80%81%E7%A9%BA%E3%82%92%E8%A6%8B%E4%B8%8A%E3%81%92%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%AA%E3%81%84-%E8%A7%92%E5%B7%9D%E6%96%87%E5%BA%AB-%E3%81%AF%E3%82%89%E3%81%A0-%E3%81%BF%E3%81%9A%E3%81%8D/dp/4041010845


読み始めはくどい言い回しがあまり好きじゃないなあと思いながら読んでいたのですが、登場人物のキャラクターが好ましくて我慢して読んでいるうちにじつは大好きな群像劇だということを知って、結局あっというまに読み終えちゃいました。言い回しのくどさも後半はさほど気にならなくなっていました。


ふつうに働く人が過ごしたある時期を丁寧に描いているというただそれだけの作品なんですが、それがすごくおもしろいというか、他人の日常を垣間見れるという点と個人的な体験を主観で切り取るだけという潔さがとても気に入りました。