最近読んだ本の感想(2014/1/1〜1/10)

今年は本をもっとたくさん読むこととその感想を書くことを心がけようと思っています。


読むだけでもとりあえずはいいんですが、読んだ後にあたまの中を整理する、具体的には感想を書く残しておくという行為をしておかないと一度読み終えた本を「お!これおもしろそうだな」なんて言いながら買ってくるというアホなことをしてしまうことが増えます...。去年はそれで3回くらい泣いているので今年は一度も泣かずに済むよう頑張ります。

1. かなたの子

かなたの子 (文春文庫)

かなたの子 (文春文庫)

生れるより先に死んでしまった子に名前などつけてはいけない。過去からの声があなたを異界へといざなう八つの物語。

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短編のどれもが非科学的なお話ばかりですが、こういう土着文化、信仰の話がわたしはすごく好きです。
読みながら、なんだか昔読んだ怖いむかしばなしを読んでいるような得も言われぬ恐怖にかられたし、もっとも身近にある出来事であるはずなのにまったくつかみどころのない死というものが人間にとってどれだけ特別なものであるのかということもあらためて思い知らされました。


地獄の絵本とか好きな人にはおすすめしたいです。

2. 主よ、永遠の休息を

主よ、永遠の休息を (実業之日本社文庫)

主よ、永遠の休息を (実業之日本社文庫)

通信社社会部の記者・鶴田吉郎は、コンビニ強盗の犯人逮捕を偶然スクープ。現場で遭遇した男から、暴力団事務所の襲撃事件について訊ねられた吉郎は、調査の過程で、14年前に起きた女児誘拐殺人事件の“実録映像”がネット配信されていたことを知る。犯人は精神鑑定で無罪とされていた…。静かな狂気に呑み込まれていく事件記者の彷徨を描いた傑作、待望の文庫化。

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やる気のさほどない新聞社社会部の記者が、近所のコンビニで起きた強盗事件にぐうぜん遭遇したことをきっかけにある事件に踏み込むことになるというお話。読みながら「さまよう刃」のことを思い出していたのですが、なんていうか娘をもつ身としてはいたたまれない話です...。

状況の描写や設定がすごく丁寧だったおかげでリアリティが感じられて作品の世界にのめりこんで読み進めました。

よい作品。


3. リテイク・シックスティー

高校に入学したばかりの沙織は、クラスメイトの孝子に「未来から来た」と告白される。未来の世界で27歳・無職の孝子だが、イケてなかった高校生活をやり直せば未来も変えられるはずだ、と。学祭、球技大会、海でのダブルデート…青春を積極的に楽しもうとする孝子に引きずられ、地味で堅実な沙織の日々も少しずつ変わっていく。

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「16歳のころに戻れたなら...」

成人してしばらくたった人であればきっと一度は考えたことがあるのではないかと思いますし、じつはわたしもそんなふうに考えたことがあります。高校に入ったばかりのころに戻ることができたら、もっとたくさん勉強してもっといい大学に入りたいしもっと友達と仲を深めておきたいなーなんて考えていました。

あと、いまの記憶をもって16歳に戻ることができたらちょっと先の未来の記憶ももっているわけでこれって最強じゃん!と思ったりもしていました。


でもこの本を読んで「過去を変えるということは未来も変えることだ」という当然の結果に思い至っていなかったことに気づきました。

いや気付いていたのですが気付いていなかったというか考えが足りなかったというか、自分にとって都合のいい変化ばかりが起こることばかりを想像していたのですが、逆にいま手にしている大事なモノの無くなってしまうことになる可能性をすっかり失念していました。


もし16歳のころに戻って別の人生を歩んだとしたら、たぶん大学は山形以外のところに行っていただろうし、そうなると結婚相手もきっと違う人だろうなと思います。そうなれば必然的に子どもたちとも会えないわけでそれはとても悲し過ぎてそんな別の人生を望もうとは到底思えなくなってしまいます。

歳を重ね、その中で大事なものが増えてくればくるほど人生のやり直しというのはむずかしいしできなくなるんだなと。


そして上で書いたこととはちょっと矛盾しますが、仮に16歳からやり直したとしてもやっぱり人生ってそんなに大きく変えられないんじゃないかなという気がしたし、本書でもそんなことを示唆するエピソードが入っていました。

ただ「それは何かによって変化が制限されている」という話ではなく、「三つ子の魂百まで」ということわざが示すとおり、16歳に戻ってもやり直す人が自分である限りは大きく変えられないんじゃないかということです。いくらやり直しても自分である以上はその限界は超えられないし、自分に見合った程度の人生にしかならないんですよね。

やり直した人生を自分の人生だと引き受ける覚悟をもたなければ結局何度やり直してもなにも変わらないんじゃないかなというのがこの作品から得た結論でした。そして過去に戻って人生をやり直したいというのは、かなわないからこそ夢として成り立っているんだなということをあらためて実感しました。


なんか書きたいことがたくさんあって「リテイク・シックスティーン」だけ別エントリーに起こせばよかったなといまさら反省しました。


4. くちびるに歌を

くちびるに歌を (小学館文庫)

くちびるに歌を (小学館文庫)

拝啓、十五年後の私へ。中学合唱コンクールを目指す彼らの手紙には、誰にも話せない秘密が書かれていた―。読後、かつてない幸福感が訪れる切なくピュアな青春小説。

http://www.amazon.co.jp/%E3%81%8F%E3%81%A1%E3%81%B3%E3%82%8B%E3%81%AB%E6%AD%8C%E3%82%92-%E4%B8%AD%E7%94%B0-%E6%B0%B8%E4%B8%80/dp/4093863172


以前、乙一さんが別名義で書いた小説ということで話題になったときに初めてこの本のことを知りました。

離島の中学校で起こったささやかな出来事を合唱部のメンバー中心に描いた群像劇でしたがこれがもうとてもよかったです。作品にはわりとたくさんの人が出てくるのですが、個々の登場人物たちのキャラクターがたっているので人物像がぼんやりすることもありませんでしたし、人物同士の相関がそれぞれのパワーバランスもふくめて立体的に感じられるほどきっちり描かれていました。


安易ないい話としてまとめていないあたりもすごく好印象です。とてもおもしろかった!


ちなみにこの作品は映画化されるそうですが、誰が監督をするのか?とか、誰がキャストされるのか?なんてことがいまからとても楽しみです。合唱部を題材にした映画といえば「うた魂♪」を思い出しますがあれもすごいよい作品だったのでこの映画もはやく観たいです。