「「意識高い系」という病〜ソーシャル時代にはびこるバカヤロー」読んだよ

「意識高い系」と呼ばれる人々の存在をご存じだろうか?数年前からネットスラングにもなった、この「意識高い系」という言葉は、セルフブランディング、人脈自慢、ソー活、自己啓発など、自分磨きに精を出し、やたらと前のめりに人生を送っている若者たちのことを指す。なぜ彼らは、「なりたい自分」を演出し、リアルな場やネット上で意識の高い言動を繰り返すのだろうか?本書は、相互監視社会やコミュニケーション圧力、ソー畜といった現代における諸問題から、「意識高い系」が生み出された原因を追及し、「なりたい自分」難民の若者たちに警鐘を鳴らす。

http://www.amazon.co.jp/dp/4584123918

ここ数年はわりと小説ばかりを読んでいたのですが、最近また新書をよく読むようになってきました。
別に小説に飽きたというわけではないと思うのですが、その理由がすぐに思いつかなかったので少し考えてみたら大きく2点あることに気づきました。

ひとつはフィクションばかりを続けて読んでいると不意にノンフィクションも読みたくなることが多くなったことです。
これはもうバランスの問題というか、ご飯ばかり食べてるとたまにパンを食べたくなるみたいなそんなことだろうと思います。ずっとご飯だけじゃ飽きちゃうよね!


そしてもうひとつはネットでよく名前を見かける方が新書で本を出すことが増えてきたためです。
いつも読んでしまうくらい気に入っているブログやニュースサイトに寄稿している方が本を出すとなれば、それを一度読んでみたいと思うのは「大晦日にはそばを食べる」くらい自然な成り行きだと思います。


とにもかくにも新書に手が伸びやすくなっているのは↑の分かるようで分かりにくい理由がはたらいたからですが、理由はなんであれ、新書が最近のお気に入りであることは間違いありません。


さて。
あいかわらず前置きばかりが長くなってしまいましたが、本書は「ネットで話題になっていた」ことと「新書らしい煽りの効いたタイトルが気に入った」ので読んでみました。特にタイトルに釣られたというのが率直なところです(笑)


本書のタイトルにある「意識高い系」という単語を目にしたとき、ネットでよく見かける数名の名前がふと思い浮かびました。

具体的な名前を書くとめんどくさいことになりそうなので書きませんが、その名前が浮かんだ人たちは、口だけ、書くことだけは立派なんだけど実際の行動が伴って無さそうな人という印象がありました。で、そういう人の文章って交友関係や知識自慢ばかりで得るものもなければ読んでもおもしろくないものが多く、完全にわたしの興味の対象外な人ばかり。
なのでその人たちの名前だけは(悪い意味で)おぼえていたものの、ブログやニュース記事を追いかけることはなかったし、むしろ名前を見たら避けてさえいました。

そもそも恒常的におもしろいことを書いていたり、実世界で自分の興味があることに関してなにかを為したという成果がある人ならともかく、何のバックグラウンドもないのに耳触りのいいことを根拠レスで書き綴っているだけの胡散臭い人がなんであんなふうに注目されてるのかわかんなかったんですよね。

ただ個人的にはこういう人と関わりたくないなと思ったものの、直接的に迷惑をかけられたおぼえもないので距離を取るだけで別に憎いとか嫌いという感情はありませんでした。そばにいたらめんどくさそうだなーくらいの感じはありましたけど。


そんなざっくりとした印象をもっていたので、自分があまり好きではない種の人たちがどのように切り捨てられるのか楽しみに読みはじめてみたのですが、意外にもそのような主旨の内容ではなくてちょっと驚いてしまいました。煽り気味のタイトルから「そういった人たちを一方的に叩く内容ではないか」という先入観を抱いていたのですが実際には違っていました。


本書は「意識高い系」の人たちが生まれた背景にあるのは社会的不安からくる承認欲求からではないかとか、意識を高くもつことは悪いことではないがそれだけでは決して成功に近づけないということを自身の体験をベースに書かれています。さらに意識を高くもつことを無責任に煽る人たちの問題を明確に指摘したりと大変丁寧に論をまとめています。

ただのタイトルフィッシングな本だと思っていたのですが、完全に意表をつかれました。

本書内でも意識高い系の学生に振り回されて被害にあったという事例も書いていますし、以前ノマドを自称する人に不快にさせられたという記事を書かれていたこともあるので、基本的に著者は意識高い系の人が嫌いなのは間違いありません。ただ、そこで「こういう人たちって本当にうっとうしい人種なんだよ」と愚痴るだけにとどまらず、社会情勢やSNSの台頭、そしてそれに著者自身が過去にとった行動や経験を加味してこういった人たちが目立つようになった原因を分析して本にすることで、そういった人たちに不快にさせられた分を取り戻すかのように換金してみせたこの前向きさには感銘を受けました。