1年前に交通事故で父親をなくした小学6年生のユウタは、夏休みにひとり、父親とよくカブトムシを取りに行った思い出の場所・山奥のダムへ昆虫採集に向かい、不思議な老人と出会う。突然の豪雨で足をすべらせ、意識を失ったユウタが目を覚ました場所は30年以上前の村だった。何が起こっているのか、全く分からないユウタの前に、再び不思議な老人が現れ、ユウタは1か月間、この時代に居続けなければならないとを告げられる…。
『虹色ほたる 〜永遠の夏休み〜』作品情報 | cinemacafe.net
MOVIX宇都宮で観てきました。
独特な絵柄がいまいち惹かれなかったので観に行こうかどうか迷ったのですが、予告を観た時に感じた「これはおもしろいんじゃないか?」という予感と評判のよさを信じて観に行ってきました。
本作はダムの底に沈んでしまった村が沈む直前の時代にタイムスリップし、その村最後の夏を村の人たちといっしょに過ごすというのがメインストーリーなのですが、スクリーンいっぱいに描かれる古き良き日本の原風景はノスタルジーに満ちていて観ているだけで胸が高鳴りました。
早朝の森の静謐な空気とそこでの虫取りの楽しさや、日差しの下で水遊びに興じるときの喜び。
さらに夏の寝苦しい夜の空気や夏祭りがある夜の独特の空気感。そのいずれもわたしの記憶の中にある「夏の思い出」へのリンクを刺激し、初めてみる光景ばかりなのに不思議なことに既視感さえおぼえてしまうシーンのオンパレードでした。
その中でも特にすばらしかったのはユウタたち3人がほたるを観に行くシーンです。
まるでそこに身を置いているような臨場感と共に目の前いっぱいに広がったホタルの光の鮮やかさや美しさには、言葉にならないほどの感動をおぼえました。
そしてあのホタルの群れを見ていたら、幼い頃に自宅の近くの山に家族全員でホタルを観に行ったときのことをふと思い出してしまい、その懐かしさにまた興奮し、そしてその当時の思い出に想いを馳せずにはいられませんでした。
そして本作のもうひとつの魅力は「失われるものだからこそ輝く瞬間がある」ということを描いていた点です。
何事もそうですがモノの価値や大事さというのはなかなか推し量ることが出来ません。
特にいま自分が手にしているものの大事さというのは、いざそれが失われるという状況にでもならなければいかに大事なのかと言うことが分からないんだと思うのです。たしかに、改めて客観的な評価をする機会でもなければその価値に気付くタイミングってまずないんですよね。
ずっと住んでいた村がダムに沈んでしまい、そしてずっといっしょに遊んでいた友だちもみんな離れていってしまう。
たしかにそれはとても悲しいことだけど、でもそういう失われることが決まった状況だからこそその価値に気付くことが出来たとも言えるわけなんですよね。
この作品で描かれる日常のみずみずしい輝きは、これがこの村で過ごせる最後の夏休みだと思うからこそ、そしてもうこんなふうに遊べるのは長くないと思うからこそ生まれるものであり、そしてこの美しさはホタルが短い命を燃やして輝く美しさに通じるんじゃないかなと感じたのでした。
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