- 作者: 白石一文
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/04/06
- メディア: 文庫
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戦争、テロ、狂信、犯罪、飢餓、貧困、人種差別、拷問、幼児虐待、人身売買、売買春、兵器製造、兵器売買、動物虐待、環境破壊−−。私たち人間は歴史の中でこれらのうちのたった一つでも克服できただろうか。答えは否だ。
この世の全部を敵に回して | 小学館
ちょっと前にtwitterで「マックで隣の女子高生がメソッド」というのが流行ったことがあります。
詳しくはこちらをご覧いただきたいのですが、簡単にまとめると自分の言いたいことやネタをマックで女子高生が言ってたという体裁に組み入れると受けがいいというものでして、いい意味でも悪い意味でも一時期話題になりました。
「なにを言ったのか」よりも「誰が言ったのか」が重視されているということなのか、それとも女子高生が意外なことを口にするというそのギャップが受けているのか分かりませんが、とにかく自分以外の誰かの口を使って自己主張するというのは古今問わず割かし使われる手法だったりします。
さて。
本書はこれと少し似た構造をしていて、著者が考え抜いてたどり着いたと思われるこの世の真実が「ある人が残した遺作」という形式で紹介されていきます。遺作は小説というよりは独白といった方がよい内容でして、終始独り言をつぶやくようにこの世がどういう世界なのかということをとうとうと語っています。
内容は著者自身がつよく主張したいことなんでしょうが、あくまで「ある人が残した本」という体裁を取っているおかげで、おしつけがましさがさほど感じられなくてそこは第三者に語らせている効果がしっかりと感じられました。
内容についてはかなり賛否が別れそうですが、内容の是非はともかく言いたいことについては共感をおぼえる部分も少なからずあり、読んでよかったと思える作品でした。
ただ、あまりに重くて読み終えてからしばらくはどんよりとした気分に....。