
- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/06/23
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「まだそっち側に行ってはいけない。そっち側に行ったら、二度と引き返せない。」
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幼い時から舞台に立ち、多大な人気と評価を手にしている若きベテラン・東響子は、奇妙な焦りと予感に揺れていた。伝説の映画プロデューサー・芹澤泰次郎が芝居を手がける。近々大々的なオーディションが行われるらしい。そんな噂を耳にしたからだった。同じ頃、旗揚げもしていない無名の学生劇団に、ひとりの少女が入団した。舞台経験などひとつもない彼女だったが、その天才的な演技は、次第に周囲を圧倒してゆ
く。稀代のストーリーテラー・恩田陸が描く、めくるめく情熱のドラマ。
演じる者だけが見ることのできるおそるべき世界が、いま目前にあらわれる!
いまみたいに映画をよく観るようになる前は演技力みたいなものはよくわからなくて「俳優とか女優というのは容姿がよければいいんでしょ?」なんて思っていました。もちろん映画を多少観始めたくらいの時もそのあたりの意識は全然変わらなくて、映画を観に行くかどうかの基準といえば「出ている人がかわいいかどうか」というのがほとんどでした。
「シュガー&スパイス」は大好きだった沢尻エリカが出てなかったら観に行かなかったなあ...。
# 別に観たことを後悔しているわけではありません
ところが、そんなわたしの意識をふっとばして壊してくれた二人の女優がいました。
上野樹里については昔散々書いたのでもう書くこともないのですが、「虹の女神」での彼女のミューズっぷりにほれこんでしまい、過去の出演作をいくつか観てみました。観たのは「亀は意外と速く泳ぐ」と「サマータイムマシンブルース」「ジョゼと虎と魚たち」「幸福のスイッチ」ですが、これらのいずれもおどろくほど違った表情を見せていて、上野樹里らしさというものを感じさせない役への入り込みぶりに一気にファンになってしまいました。
ただ「のだめ」に出てからはあれがあまりにはまり役だったためか、以降いまいち作品に恵まれていないような気がしていて*1最近はさほど追いかけてはいませんが、わたしが映画を好きになった一因を作ったのが彼女であることはうたがいようのない事実だと言えます。
そしてもう一人のエレン・ペイジですが、彼女との出会いは「JUNO」という作品でした。
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これはすごく有名な作品なのでご覧になった方も多いと思いますが、この作品を観て一発で彼女の魅力の虜になりました。プライベートでは一目ぼれなんてしたことはありませんが、エレン・ペイジについて言えば完全に一目ぼれでした。何でもかんでも思っていることをストレートに言ってるようで、本当に言いたいことはなかなか言えず本心をさらけ出すことができない不器用なジュノがかわいいと感じられてしょうがなかったのです。
容姿だけでいえば美人とはとてもいいがたいエレンですが、あの作品で見せた輝きは誰よりも魅力的でわたしの気持ちを一気に惹きつけたんですよね。
結局、JUNOはなんだかんだで合計4回映画館で観たのですが*2、何度見ても表情の機微を表現するうまさや豊かさ、愛らしさを再発見せずに観終わることはありませんでした。いまでも家でよくDVDを見直していますが、新しい発見に満ちたすばらしい作品だと断言できます。「JUNO」はわたしにとってオールタイムベスト級にLOVEな作品です。
で、「JUNO」での彼女がすてきだったので彼女の過去の作品が気になって「ハードキャンディ」を観てみたのですが、これがまたまったくおそろしく違う表情をしていましてまさにちんこが縮み上がる想いで鑑賞しました。これ、ものすごい作品なのでエレンに興味が無くても観ることをおすすめしますが、この豹変っぷりというか「JUNO」で見せたキュートさをみじんも感じさせない変貌ぶりにさらに惚れ込んでしまったんですよね。
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で、この時点でもうかなり好きになっていたのですがダメ押し的な感じで「ローラーガールズダイアリー」が公開されたんですよ、奥さん!(誰だ)
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この作品のエレンを観てキュンとしない人はたぶんこの世の中にはいないと思いますので、これを観たことない人はちゃんと正座して観ていただきたいのですが、観れば納得の傑作ですしエレン・ペイジの魅力をお腹いっぱい堪能できます。
ちなみに割とどうでもいい話なんですが、3年前にシアトルに行ったときにホテルで新聞を読んでたら偶然エレン・ペイジに関する記事が載ってたので嬉しさのあまりその新聞を持って帰ってきたことがあります。そしていまだにその新聞は大事に取ってあったりします。
おらのお宝だべよ。
この二人がわたしに教えてくれたのは、「物語の一部として他者になりきることや他者を演じることがいかに特別なスキルが必要であるか」ということと、そして「演じるという行為そのものがもつ魅力」でした。この二人と出会って以来、役を演じるという行為自体に目を向けるようになったのです。
さて。
本書「チョコレートコスモス」は、何かになりきって演じるということのむずかしさやおもしろさを、演じることに関しての才を先天的・後天的に身に着けた二人の女性姿をとおして描いた作品です*3。待ったなしの状況の中で瞬時に対象になりきってその役を演じるというのは非常に難しくて考えてみるだけで胃が痛くなるのですが、それほどむずかしくて大変だと感じるようなことを期待以上の結果を残してみせることで彼女たちの持つ才の本当の色というか輝きが感じられました。
映画を観るようになってからずっと抱えていた「演じるってなんなんだろう?」という疑問について、あらためて考えてみるきっかけになりました。恩田さんらしい緻密だけれど全体も把握しやすい文章はとても読みやすかったし、何よりもどう結末に結びつけるのかまったく予想もつかなくて大変たのしく読みました。
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