「魔女の笑窪」/「魔女の盟約」読んだよ

魔女の笑窪 (文春文庫)

魔女の笑窪 (文春文庫)

東京で裏稼業のコンサルタントをする水原。彼女には、掟破りの島抜けをしたという、誰にも言えない過去があった-。迫り来る「地獄島の番人」。東京裏社会を舞台に必死の逃亡劇がいま始まる!

http://www.amazon.co.jp/dp/4163245901

魔女の盟約 (文春文庫)

魔女の盟約 (文春文庫)

過去と決別すべく“地獄島”を壊滅させ、釜山に潜伏していた水原は、殺人事件に巻き込まれるが、危ういところを上海から来た女警官・白理に救われる。白は家族を殺した黄に復讐すべく、水原に協力を依頼するが―。日中韓を舞台に、巨大な組織に立ち向かう女性たちを壮大なスケールで描く、『魔女の笑窪』の続編。

http://www.amazon.co.jp/dp/4167676087/

「ハードボイルド」という言葉は昔から聞いたことがあるので知っていますが、その魅力がいまいち理解出来ませんでした。
そもそも"かっこいい人"よりは"弱くて見ているのもいたたまれない人"に惹かれてしまうわたしの性格上、「ハードボイルド」という言葉で形容されるような登場人物が出てくる作品はなかなか読もうと思うことがなかったのです。


先日、映画を観るまでの暇つぶしに足を運んだ本屋で本書(魔女の笑窪)を見かけたときに、著者の大沢さんがハードボイルドな登場人物が出てくる小説を書く作家に名を連ねていたことを思い出して手に取ってみました。


相互接続性のある短編で構成されている「魔女の笑窪」と、その後の水原を描いた長編「魔女の盟約」。


見るだけで男の本質を見抜いてしまうと能力をもつ水原が主人公として描かれる「魔女の笑窪」。
その能力を駆使してシビアな裏の世界を生き抜く水原は、まさにハードボイルドという形容がぴったりの人物像でして、初めて出会う「ハードボイルドな主人公」に嬉しくてにやにやしてしまったのですが、読み進めれば進めるほどに竹を割ったようなという形容でも物足りないくらいにきっぱりさっぱりした性格の水原が何だか怖くて、「次は何をしでかすんだろう」と怯えながら読みました。
ここまで共感するポイントのない話を読むのはなかなか刺激的でして、こういう話も悪くないなと思ったのでした。


そして「魔女の笑窪」のラストで日本を去る羽目になった水原のその後を描いたのが「魔女の盟約」。
相変わらずハードボイルドな水原ですが、「男の本質を見抜く」という能力はすっかり鳴りを潜め、特異な能力者としてではなく度胸と頭のいい普通の切れ者として活躍していました。これは前作のラストで彼女の能力の源泉である場所がつぶされたことが関係しているのだと思いますが、あの能力があったからこそ彼女がどんな場所でも生き抜けたと思っていたわたしにとっては何となく腑に落ちない展開でした。
まあ、面白かったのでいいんですが。


個々に読むよりも続けて読むと面白い作品でしたので、読もうという場合には2冊を手元に準備してから読みはじめることをおすすめします。