「神田川デイズ」読んだよ

神田川デイズ (角川文庫)

神田川デイズ (角川文庫)

かっこ悪くていたたまれなくて、ちょっぴり愛しい上京ボーイズ&ガールズのキャンパスライフ。俊英、豊島ミホ、ついにきたど真ん中の青春小説。

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本書を読んでまっさきに浮かんだのは同じく豊島さんの著書である「檸檬のころ」のことでした。
檸檬のころ」は"別に特別でもなんでもない日常こそが青春そのものなんだ!"という、わたしが長年ずっとモヤモヤと感覚的に感じていたことがしっかりりと言語化されていた傑作ですが、本書はまさにその再来であり、読みながら胸がドキドキと高鳴るのをおさえることが出来ませんでした。


檸檬のころ」が田舎の高校を舞台にしているのに対して、本書は都内の大学を舞台にしている点が大きく異なりますが、エッセンスはまったく一緒で何気ない日常をとおして青春を表現しているのです。
誰もが経験したことがあるような何てことのない日々が積み上げられることで湧き上がる、むせ返るほど濃い青春の日々。
初めての環境に戸惑ったり浮き足立ったり人間関係に悩んだりするという誰もが共感できるような出来事を、日常の中から切り取って描くそのチョイスのよさがもうすばらしくて、後半はもう自分の過ごした大学時代を思い出しながら読みふけってしまいました。


以前、「歩いても 歩いても」の感想でこんなことを書いていました。

長い長い人生の中で、この作品はなぜこのような一日を切り取ろうと思ったのかわたしにはよく分からないけれど、例えば自分が死ぬ時に不意に思い出すとしたらこんなちょっとだけ特別な一日なんだろうなという気がしました。

歩いても 歩いても - 子持ちししゃもといっしょ

日常の中の本当にちょっとだけ特別な一日が人生で最も忘れられない一日になるという当時の考えは、今も変わっていません。
そんな価値観をもっているわたしだからこそ、日常の中の一場面を切り取って描いた本作がすごくたまらないんだろうなと思います。
これと「檸檬のころ」は死ぬまで読み返します。


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