「シュンペーター」/「シュンペーター 孤高の経済学者」読んだよ

シュンペーター (講談社学術文庫)

シュンペーター (講談社学術文庫)

「市場主義」による経済構造改革を主張する人々に好んで引用されるシュンペーター。「企業者精神」「イノヴェーション」「創造的破壊」などの概念はどのような文脈で理解されるべきなのか。ウィーンで学び、大蔵大臣・銀行頭取などを歴任、破産の憂き目に遭いながら、独創的理論を打ち立てケインズと並び称された二十世紀経済学の天才の思想と生涯を追う。

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4061597434/

シュンペーター―孤高の経済学者 (岩波新書)

シュンペーター―孤高の経済学者 (岩波新書)

「不況は“お湿り”」と喝破したシュンペーターケインズと並び20世紀を代表するこの経済学者は、ヨーロッパ、アメリカでの生涯を通して、資本主義の本質を問い続けた。三度の結婚、大蔵大臣としての挫折など起状に富んだ軌跡を追いながら、今こそ光彩を放つそのイノヴェーション論、景気循環論、企業者像、さらには社会主義観を描く。

http://www.amazon.co.jp/dp/4004302730


普段は経済学の本なんて読むことはないのですが、「イノベーション」についていろいろと調べていたらこの言葉を提言したと言うシュンペーター博士に興味がわいてきたのでその入門書としてこの2冊に手を出してみました。
内容としては経済学の話そのものというよりは*1シュンペーター博士の生涯についてまとめたものであり、その点はとても読みやすくまとめられていてよかったのですが、元々わたしが知りたいと思っていたイノベーションについてはほとんどまとまった記述は無くてWikipediaよりもそこそこ詳しい程度の内容しかなかったのは非常に残念でした。
それでも、博士の論文や出版物からの引用を多用して、彼の考えの根底にあったものをひとつひとつ紹介してはその意図しているところを紐解いていくことで、シュンペーター博士が経済のあり方をどのように見て、どのようにその姿を一般的に記述しようとしていたのかというところはぼんやりとですが伝わってきました。


資本主義はこれ自身の成功によってメカニズムが狂ってしまい社会主義化していくことは避けられないという主張は初めて聞いた時には「?」となったものの、詳しく追えば追うほどなるほどと納得させられましたし、ワルラスが主張した静学的均衡理論に感化されたシュンペーターはこれをさらに発展させて動学的な均衡理論を作り上げようと試みたそうですがそのエピソードからは、慣性系に限定して組み立てられた特殊相対性理論を加速度系に適用出来るように拡張した一般相対性理論として再構築したアインシュタインをほうふつとさせられました。


この本を読むまではイノベーションというのは「何か新しい価値あるものを作ること」だと漠然ととらえていましたが、元々はそうではなくて、企業者と呼ばれる人が自身のもつ既存リソースを組み合わせて新たな価値を生み出すことがイノベーションの創出であり、このイノベーションの模倣者が増えることで景気がよくなるけれど、いずれそれも落ち着いて不景気へと移っていくという一連の主張がとても信憑性のあるものであると直観的に感じたのです。
このあたりは抜粋+意訳された文章だけでは何ともわからないので、あとで原著にあたってみようと思います。


正直、本の半分以上はわからない単語だらけでそれらを適宜調べながら読み進めたので読み終えるまで2週間もかかってしまったのですが、読み終えてみてこれからも経済学の勉強は続けたいなと思いました。

*1:幾分著書に関するトピックもありましたが