毎日4時45分に帰る人がやっているつまらない「常識」59の捨て方
- 作者: 山田昭男
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2013/08/02
- メディア: 単行本
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営業は携帯、パソコン、事前アポ不要!上司が頑張れない仕組みをつくれ!日本一“社員”が幸せな会社の“反常識”仕事術。誰でもマネできる社員18人の実践例も満載!『ホウレンソウ禁止で1日7時間15分しか働かないから仕事が面白くなる』の実践版。
http://www.amazon.co.jp/dp/4492045104
本書はユニークな社風が有名な未来工業のエピソードをまとめた本ですが、変わった会社と言うよりも合理的な会社だなという印象を受けました。
この会社でもっとも有名な「1日7時間15分しか働かない」という部分だけをとってみても、「1日7時間15分しか働かなくてもいい」ではなく、「1日7時間15分しか働いてはいけない」という表現が正しくて、つまり効率よく仕事を片付けなければ自分がやらなければならないことを終えることができなくて結局自分も困るしお客さんも困るというだけだったりします。
サービス残業が当たり前の環境で働いている人からしたら「長時間労働をさせない」というのはすごくうらやましく思うかも知れませんが、その対価として求められていることを考えれば手放しで喜べる話ではないことがわかります。もちろん効率化をすすめることはすごく大事なことなんですが、その徹底ぶりを知ると、ある意味では長時間労働になったとしても自分のペースで仕事を終わらせることができる他の企業の方がよほど楽なんじゃないかと思えたりもします。
作業を効率的にするのって、時間のかかる作業を長くやるより頭を使わないといけなくて大変ですからね...。
ただ、正直に言って「これってひとつひとつは正しいことかも知れないけれど並べたら矛盾しているんじゃない?」と感じる部分もありました。たとえば「上司は部下に対して命令するのではなく説得しなければならない」と書いてあるのに「やる前からできないと言わない」みたいことも書かれていて、結局部下はいうこと聞くしかないんじゃないの?なんて思ったりもしました。
あとは仕事を円滑にすすめるために多少の早出や残業を自主的にやれる人になれみたいなことも書かれていて、このあたり働く側が自主性を見せてそうするのであればともかく、上の人間がそれ求めちゃダメなんじゃないの?なんて思ったりもしたし、全部が全部納得のいく内容ではなかったのは事実です。
率直にいって半分くらいは眉唾だし、正しくないと思いました。
ですが、それでもこうやって小さな改善を積み重ねて会社をよく保っていくというやり方はすごくいいなと思ったし、少なくともマニュアルやルールばかりを決めてそれを守ることに終始している会社よりは、常に今あるルールや常識をうたがって改善できないか心がけるこの会社の方が健全だよなと思いました。
もちろん、これをすべての会社に適用するのはむずかしいし、ある程度の大きさの組織でいきなりこんなことを始めたとしたらおそらく半年ともたずに仕事が回らなくなるだろうなと思います。これが正しく機能しているのは社長や現社員がこの考えを根っこの部分からちゃんと理解していて、その中でうまく仕事を回しているからだろうなと思います。
そしてこれがうまくいっているのはおそらく人を選ぶのがすごくうまいんじゃないかなと感じました。
以前、たしか2010年だったと思いますが仕事でサンノゼにあるGoogleへ行ったときにGoogleの人事採用について話を聞く機会がありました。当時、Googleは既に大企業として名を馳せていて社員も1万人を超える規模の人が働いていたのですが、採用するすべての人について創業者の二人が目を通しているという話を聞いてすごくおどろきました。
誰もが知っているとおり、Googleはイノベーションの塊のような会社でして出すサービス、アイディアのいずれもユニークで社会のあり方でさえも変える勢いのあるものばかりです。ではGoogleはどのようにしてイノベーションを生み出しているのか?という話を聞いたときに、「正しい人同士をコミュニケートさせることでイノベーションを起こそうとしている」ということを言っていたのです。
この「正しい人」という表現がちょっとよくわからなかったのですが、あれこれ話を聞いているうちにどうもイノベーションの種をもっているような優れた人のことを指しているのではないかと思うようになりました。
もともと、イノベーションというのはシュンペーター博士が著書の中で新結合と呼んでいたものであり、自ら生産を行う力をもつ「企業者」がそのもっている生産要素同士を組み合わせて新しい価値を創造することを意味しています。
つまりGoogleは企業者として、自らが抱えるイノベーションの源泉である社員たちにコミュニケーションを取らせることでイノベーションを創出しようとしているのかな?と話を聞いていて思いました。そしてそのためには社員は誰でもよいわけではなく、イノベーションになりうる種、つまりある分野について突出したスキルなり知識を有する人を集めているのだろうと思ったのです。
話が少しそれてしまいましたが、未来工業もおそらく採用をものすごく丁寧にやっていて、この考え方を受け入れて推進できる人を選んでいるんじゃないかなという気がしました。そのくらいここに書かれていることをちゃんと実践できる人は多くないと思います。