- 作者: ツルゲーネフ,神西清
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1952/12/29
- メディア: 文庫
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年上の令嬢ジナイーダに生れて初めての恋をした16歳のウラジミール深い憂愁を漂わせて語られる、青春時代の甘美な恋の追憶。
http://www.amazon.co.jp/dp/4102018042
映画を観ていてどういうときが一番困るのかというと、登場人物がどれも似たり寄ったりの外見ではほとんど見分けが付かないときです。
アメリカの映画は人種が多様である場合が多いので比較的よいのですが、ロシアあたりの映画だと○○スキーといった名前ばかりだったり、全員どことなく赤ら顔だったりと区別に困ることが多い印象があります。
本作「はつ恋」もまた、登場人物の区別しにくい作品であり、読み進めるにはかなりの精神力を要求されました。
基本的には登場人物はさほど多くない上に一見いずれも個性豊かな人たちのように感じられるのですが、どうも頭に入らなくて何度も登場人物の説明が書かれている部分に戻って復習しながら読み進めました。
さて。本作はタイトルのとおり、初恋をテーマにした作品でしたがもうものすごくモジモジしながら読みました。
時代の違いによる日常の風景や慣習、異性へのアプローチ方法の違いはあるものの、初めて異性を意識しだしたときの胸がぎゅっとしめつけられたときのような息苦しさや好きな人の一挙手一投足に一喜一憂してしまうもどかしさがたくさん詰まっていて超甘酸っぱいのです。
そしてさらによかったのがウラジミールの初恋の相手であるジナイーダの奔放さ。
彼女は取り巻きたちが自分に好意をよせていることをいいことに、言いたい放題やりたい放題と散々なのですが、誰一人そんなジナイーダのわがままを叱らないどころかみないちように嬉々としてその言葉に従います。その男どもの足元の見られっぷりっていうんですかね、好きになってしまった以上は相手に主導権を渡さなければならない切なさと、でも好きな人にかまわれるのはとても嬉しいという複雑な心境がすごくよく伝わってきました。
そしてそんな日常を繰り広げている中で、実はジナイーダは自分の取り巻きの中ではなく、別のある人と恋に落ちていたのです。その影響もあって、徐々にジナイーダが大人へと変わっていき、周囲との間に距離が出来ていくという描写はなかなか真に迫るものがあって感心せずにはいられませんでした。
初恋なんて遠い昔の出来事なのでもうすっかりと忘れていたのですが、そんな昔の記憶が不意によみがえってくるように感じられるすばらしい作品でした。