「リズム」読んだよ

リズム (角川文庫)

リズム (角川文庫)

さゆきは中学1年生。近所に住むいとこの真ちゃんが、小さい頃から大好きだった。真ちゃんは高校には行かず、バイトをしながらロックバンドの活動に打ち込んでいる。金髪頭に眉をひそめる人もいるけれど、さゆきにとっては昔も今も変わらぬ存在だ。ある日さゆきは、真ちゃんの両親が離婚するかもしれないという話を耳にしてしまい…。第31回講談社児童文学新人賞、第2回椋鳩十児童文学賞を受賞した、著者のデビュー作。

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年を取って何が一番変わったかと言えば、人を好きになる基準が厳しくなったことではないかと思います。
例えば、幼いころは一緒に遊んでくれればそれだけで十分に好きになったものですが、今はそう簡単には相手のことを信用したり好きになったりということはなくなりました。それはこれまで生きてきた経験から「信用ならない人」というサンプルが自分の中にたくさんたまり、それに合致しそうな人は極力避けようとしてしまうからだと言えます。
わたしにとってよいことばかりをいう人がいい人ではないということを知り、世の中いろんな人がいるということを知り、結局他人は簡単には信用できないという結論に達したというのが今の状態なのです。
まずは見かけで相手を判断し、そして話してみてさらに判断をくだす。そうやって自分が信用できるのかどうかを確認しながら生きているわけです。


本書を読んで見えてきたのは、そんなふうに相手を品定めできなかった頃の自分の価値観でした。
自分にとって信用できる/大事に思える人を目や理屈ではなく、直感で選んでいた時代というのがわたしにももちろんあって、そんな自分の感性を一時的に戻されたように感じました。打算で相手を判断出来なかったからこそ出来た人付き合いというのがたしかにあると思います。


幼い頃の自分と向き合えるすばらしい作品でした。
夏はお盆というイベントがあって、過去と向き合うとてもよい時期なのですが、そういう観点で考えると夏らしい作品だったと思います。