日本人の父とタイ人の母との間に生まれた美少女・ゼン(“ジージャー”ヤーニン・ウィサミタナン)。母に引き取られたゼンは、成長するにつれアクションのビデオを見ただけで、その技を習得できるという並はずれた能力を備えていることが分かり、密かに技を磨いていた。そんなある日、母が癌に侵されていることが発覚。ゼンは母を救うため、母から全てを奪ったマフィアとの抗争に挑む。だが、そこには生き別れになっていた父・マサシ(阿部寛)との再会が待っていた…。『マッハ!』、『トム・ヤム・クン!』で知られるプラッチャヤー・ピンゲーオ監督によるアクション・ムービー。
『チョコレート・ファイター』作品情報 | cinemacafe.net
チネチッタにて。
まさかこれを観て泣くことになるとは思ってもいませんでした....。おもしろいだろうなと思ったし、たしかにそのとおりとてもいい映画だったけれどもはや涙を流すまでのものとは想像もしていませんでした。わたしのつたない言葉でほめることなどおこがましいくらい、心も体も震えるすばらしい作品でした。
何がそれほどよかったのか。
ゼンのアクションシーンはたしかにどれもすばらしかった。圧倒的な多勢に一人で立ち向かうというシチュエーションがそもそもグッとくるし、次々に繰り出されるパンチやキック、時にはナイフや包丁といったものまでを紙一重で交わしたいあとに一転して反撃に転じるその見事なまでの体捌きの美しさはもはや芸術と呼んでも差し支えないように感じます。
ゼンのかわいい外見と上記のとおりのアクションシーンの激しさというかすばらしさのギャップとはかなりよくて、たしかにこれだけでも今年のベスト作品に上げても惜しくないほどに惹かれているのですが、でもわたしの受けたインパクトの理由はそれかと問われるとこれだけではないと感じるのです。
ではストーリーがよかったのかというと、それは違うと断言できる程度に凡庸なものでした。
じゃあ何がよかったのか。
それはこの作品を作るために多くの人たちが体を張って作られた映像だという点、それも一人や二人ではなく、一瞬しか写っていないような人たちも大怪我に近いような傷を作りながらひとつひとつ映像化していることが伝わってきたからです。この臨場感、特に痛さが伝わってくるリアリティは人工的に作られたものではないことは観れば分かるというレベルにまで達しているのです。
話はちょっと変わりますが、最近映画館に行った人であれば「トランスフォーマーリベンジ」の予告を観たことがあるかも知れませんが、あれを観ているとこれだけの映像がCGで作れるということに驚き、実写でなければならない理由なんて無いのではないかと思ってしまいそうになります。
CGがあれば、わざわざキックなんて当てる必要はないし、高いところから本当に落ちなくても映画は撮れるかも知れませんが、でも実際には本当にキックを当てたり高いところから落ちた時の映像の方が観ている人にはそのリアルさが伝わると思うのです。
それをリアルだと感じる理由は、蹴られた時にわずかにノックバックする仕草からそう感じるのかも知れないし、ぶつかったときの痛がる表情からそう感じるのかも知れません。もしかしたらもっと細かいわずかな違いを感じ取っているのかも知れません。
蹴られて落ちる人、殴られて吹っ飛ぶ人、ヒザを顔面に入れられて崩れ落ちる人、3階から落ちて全身を打ちつける人。
体を痛めつけられる人、人、人
この作品に出てくる一人一人が自らの体を差し出して作り上げたのがこの作品であり、このすばらしい作品を作る礎となったその一人一人にわたしは敬意を払わずにはいられません。
エンドロール直前には撮影で怪我をするゼンや彼女と戦った人々が映し出されていて、これまたものすごい痛い映像になっています。
彼ら、彼女らがこれだけの代償を払って作り上げたこのすばらしい作品をぜひ多くの人に観て欲しいと思いながら映画館をあとにしました。これはもっと話題になってもいい作品だよなあ。
今週末公開の「レスラー」がものすごく面白そうなのでどうなるか分かりませんが、現時点ではわたしにとって今年の上半期ベスト作品決定で間違いなさそうです。
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[追記]
予告とそれ以外にも動画をいくつか見つけました。
改めて見てもすごいなあ...というため息しか出ないです。