七瀬ふたたび

七瀬ふたたび (新潮文庫)

七瀬ふたたび (新潮文庫)

生れながらに人の心を読むことができる超能力者、美しきテレパス火田七瀬は、人に超能力者だと悟られるのを恐れて、お手伝いの仕事をやめ、旅に出る。その夜汽車の中で、生れてはじめて、同じテレパシーの能力を持った子供ノリオと出会う。その後、次々と異なる超能力の持主とめぐり会った七瀬は、彼らと共に、超能力者を抹殺しようとたくらむ暗黒組織と、血みどろの死闘を展開する。

http://www.amazon.jp/dp/4101171076

失敗してしまいました...。
この作品が3部作というのは知っていましたがまさかこれが一番最後だとは気付きませんでした。たしかにタイトルに「ふたたび」ってあるから最初の作品なわけないじゃんね....。そんなことにも気付けない自分が嫌になります。


さて。そんな失敗はありましたが、作品自体はさすがに面白くてあっという間に読み終えました。
この作品では、人の心が読める七瀬やノリオがそうではない人たちよりもより深い人生観を持ち、そして普通の人よりも思考がより成熟されていることにとても深い意味を感じてしまいます。
心が読めない人は相手の発言の真意を想像や過去の経験から想像するしか出来ないのですが、心が読める七瀬たちはそれを知ることができるのです。心が読めることで、いつも本音ばかりの世界に生きていて口先ばかりの言葉など七瀬にとっては無いに等しいのです。
これを不幸ととるか、それともすばらしい能力だと思うかについては人それぞれでしょうが、わたしはそんな能力はいらないなと思うのです。だって目の前で笑いながら話している人が、実は「こいつの相手するのめんどくさいし早く帰りたいな」とか「鼻毛出てるけど教えないでおこう」とか考えていると知ったら何だかんだ落ち込むでしょうし、そんなことに慣れて落ち込まなくなったとしても結局他人の事を一生好きにはなれないような気がします。
そんな能力を手に入れるくらいなら、いっそ相手の考えていることなど知らずに鈍感なままで生きていたいのです。知らない方がよいことが世の中にはたくさんあるし、好奇心よりも安寧をわたしは望みます。


それにしてもラストがなかなか衝撃的でかなりあとを引きます。読み終えた今でもかなりモヤモヤしていますが、こういう強烈な作品はここしばらくなかったのでいい刺激になりそうです。


シリーズの順番を逆行するのはとても嫌なのですが次は「家族八景」を買って来て読もうかな。


[追記]
読み終えたらものすごくテレビドラマ版を見たくなりました。
再放送やらないのかな?と思ったのですが、そんな予定は当面なさそうです。DVD出たら借りて観てみるか。