人のセックスを笑うな

人のセックスを笑うな [DVD]

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地方都市にある美術学校に通ううら若き19歳の青年、みるめ。非常勤講師として赴任してきた、自由奔放な39歳のユリに恋に落ちる。そんなみるめの背中を押してあげるのは、彼に想いを寄せるガールフレンドのえんちゃん。そしてえんちゃんに密かに恋している、みるめの親友・堂本。『犬猫』の井口奈己監督が、それぞれの人物の想いがすれ違うせつない恋をユーモラスに描く。

『人のセックスを笑うな』作品情報 | cinemacafe.net

映画館の窓口でチケットを買いたくない作品名ランキングを作ったら、まちがいなくトップランカーとして活躍していたであろうこの作品。
と言ってもわたしはこの作品は映画館では観ていません。すごく観たくて渋谷まで行ったですが、観たい回は満席で入れず、泣く泣く諦めたという悲しい思い出も今となっては笑い話です。
あの時は観れなくてすごく悲しくてもう二度と渋谷行かないよとか思ったのですが、いま思うと、劇場の窓口でチケットを売ってくれるかわいい子に「セックス大人一枚」「キャーセクハラよー!!」「ちょwwwタイトルwww」とか言わずに済んだのはすごくよかったんじゃないかと思うわけです。ホント逮捕されなくてよかった。観れなくてよかった。


さて。この作品を観終わっての感想は「映画館で観たかった」です。上で映画館で観なくてよかったとか書いておいてこんなことを言うのも恥ずかしいのですが、でも本当に心のそこからそう思いました。ものすごい作品ですよ、これ。
上映時間が150分弱と尺が長いというのもあるのでしょうが、そういう物理的な理由以前の問題で、観ているだけで呼吸するのもしんどくなるくらいリアリティで固められたようなそんな作品でした。そして、その独特の空気を作っていたのはまちがいなく蒼井優この人。
ファンの身びいきと言われそうですが彼女の演技はすごくよかったです。特にラストで不意にキスされたあとのシーンでの表情/挙動はすばらしかったです。


もうひとつ、この作品を観ていて感じたのは「自らの欲望に素直な人」と「素直になれない人」の対比がなかなか露骨で、後者に該当するようなわたしにとってはとても身につまされる思いでした。何ていえばいいんだろう...。うーん。自分の気持ちや欲望をすぐに吐露出来る人ってすごく得をしていると見られがちだし、実際、それが出来ない人と比べてみると出来る人の方が絶対に得してるとわたしなどは思うわけです。
蒼井から見た永作はまさにそういったずるい対象であり、蒼井寄りなわたしの視点はどうしても永作の奔放さが許せないんですよね。
きっとそれってうらやましいとか嫉妬みたいなものなんだろうなー。
おれ小さい。


あと、もうひとつだけすごく面白いなと思ったのは映像についてなんですが、この作品は長くカメラを回し続けたり、遠くから固定カメラで撮り続けるということがとても多くて他の作品では観られなかった映像が多いなと感じました。
目前に広がる広大な風景。そしてその風景の遠景に入ってくる小さな登場人物たち。
その構図が繰り返されているということは何か意図があるのだろうけれどその意図するところがよく分からないもどかしさも感じられたし、でも初めて見るその映像はすごく観ているだけで胸の奥がザワザワしてきて、あーすごくいいなーと思ってしまうのです。
この映像をぜひ映画館で観てみたかったなというがとても心残りです。


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