イキガミ


「国家繁栄維持法」により、国民の“生命の価値”を高めることが、社会の生産性を向上させると信じられている世界――。そこでは、小学校の入学直前に必ず受けなければならない予防接種で、1,000人に1人の確率で、あるカプセルが仕組まれる。それは、18歳から24歳になったとき、体内で指定された日時に破裂し、命が奪われるという、恐ろしいものであった。死亡宣告を受けた者は、政府によって発行された死亡予告証「逝紙(イキガミ)」が渡され、24時間後に必ず死亡する。厚生保健省の国家公務員・藤本賢吾(松田翔太)の仕事は、その逝紙を配達すること。この名誉ある仕事を全うしようとしていた藤本だが、残りわずかの人生を懸命に生きる人々を目の当たりにしたとき、変わり始める――。最後の一日を生きる3人の若者たちと、逝紙配達人の人間模様を描いたヒューマンドラマ。

『イキガミ』作品情報 | cinemacafe.net

MOVIX宇都宮にて。
最近の邦画は原作がマンガの作品が目立ちます。直近だと20世紀少年DMC、おろちあたりが該当するのですが、いずれも原作がとてもしっかりとした作品なので実写化にあたってそれにふさわしいおもしろさが要求されるわけですがこれが本当にハードルが高い。原作ファンは静止画を読んでそこから脳内に作り出された世界観に魅了された方々ばかりですから、それを実際の映像で納得させるのなんてまず無理なわけです。だからといってマンガそのものを映像化しようとしたところで、やれキャストが違うとかこのシーンはイメージと違うとか、大勢の頭の中に描かれている抽象的なものを具現化するわけですから、実写化が容易であるわけがありません。
素人視点で考えると、それだけのリスクを負って実写化するよりは普通にシナリオ書けばよさそうな気がしますが、逆に言えばそれほど面白いシナリオを書くのは難しいということをあらわしているように感じます。


冒頭から関係の無い話になってしまいましたが、わたしはこの作品のテーマである「最期のときをどう生きるのか」というのは非常に興味深いと感じました。この作品の原作は読んだことがないので原作にどれだけ忠実なのかは分かりませんが、でもこれだけ魅力的なテーマだからこそ、ぜひ実写でやってみたいと思う気持ちはとても分かるし、作品からはそのテーマをとおして伝えたいことがとてもよくつたわってきたと感じました。


死を目前にした人が見せるひとときの行動力はたしかにすごいし、時折は感動するような出来事にまで発展することがあるかも知れません。でも果たしてそんな世界に生きる人々が生の大事さを常に意識しているかといったら絶対にNoだとわたしは思います。そして、この作品が示していた答えもまた、死を常時意識させることの無意味さだったのではないかと感じました*1


そんなわけで作品のテーマやそれについての描写はひじょうにおもしろかったのですが、ただ残念なことに、わたしはこの作品を観てもまったく感情移入が出来ませんでした。どうも作品全体にリアリティが感じられなかったのです。
この世界観が悪いと言うわけではないのです。
いま自分の生きている世界だって、この作品ほど極端ではありませんが相応にひどい世の中だと思います。18歳から24歳の間だけ、1000人に1人だけという制限がある分、もしかしたらこの作品の中の方がよっぽど平和なのかも知れないとさえ思うのですが、一方で決してここまではならないだろうという根拠の無い自信が私の中に存在していてどうしてもこの世界観を受け付けることを拒否するのです。
自分自身の中で許容出来るリアリティの幅を超えていただけなのですが、そんな理由でこの作品を心から楽しめなかったのはちょっともったいない気がします。


そういえば今作で主演を演じた松田君の顔を観ていたら何となくどこか他の作品で彼にそっくりな人を見たことがあるような気がして、誰だっけ?とそればかり考えていました。結局観ている間には思い出せず、観終わって帰ってきてからやっと思い出したのですが、少林サッカーなどに出演していたホー・マンファイに似てることに気付きました。



2人を並べてみたいなあ。


公式サイトはこちら

*1:このあたり、もっと多くのことを感じて考えてみたのですがうまくまとまらないのでそのうち気が向いたらまとめようと思います