カラフル


カラフル (文春文庫)

カラフル (文春文庫)

いいかげんな天使が、一度死んだはずのぼくに言った。「おめでとうございます、抽選にあたりました!」ありがたくも、他人の体にホームステイすることになるという。前世の記憶もないまま、借りものの体でぼくはさしてめでたくもない下界生活にまいもどり…気がつくと、ぼくは小林真だった。ぐっとくる!ハートウォーミング・コメディ。

http://www.amazon.jp/dp/4652071639

これは本当におもしろかった。
いやいや、他の作品がうそだと言うわけではないけれど、この作品のおもしろさは次元が違うといってもいい気がします。先日読んだ「こころ」と並ぶほど、私の中ではとても評価の高い作品です。それはほめ過ぎだと言われてもこればかりは撤回出来ません。


死んだ人間が再挑戦という名目で死んだ他人の体に入って生きていくという その設定もすごくおもしろいのですが、この作品はその設定の面白さに甘えずに最後までしっかりとネタを詰め込んでいたtのがすごいよいなと感じました。ストーリーもおもしろくておもしろくて、2時間ぶっとおしで読み続けて最後まで読みきってしまうほど熱心に文字を追ってしまいました。すごくよかったです。


以下はネタバレ混みなので、未読の方はこれより先は読まないでさっさと本屋に言ってこの本を買って読んでください。
未読の人がこれ以上読むと、パソコンの電源部分から煙が出てきて故障します。





うそです。



この作品は二度読むべき作品だとわたしは思います。
一度目はラストのどんでん返しを楽しむために読み、二度目はいかに先入観が怖いものかということを思い知るために読むのです*1
自分のことは何でも分かっていると思いがちですが、案外そうでもないなということに最近気付かされることがありました。


先日、わたしの弟が泊りがけで遊びに来たのですが、酒を飲みながら話していると話題は子どもの頃の話になったのです。
あーだこーだと思い出話をしているうちに、ずっと平凡で何もないと思っていた自分の人生が意外にも山や谷の連なるそれなりに複雑な人生だということに気付いたのです。幼い頃の家族の構成や内情。とてもここには書けないようなハプニングやトラブルなんかも結構多くて、弟と2人で言い合ったり笑ったりしながら思い出を発掘しあいました。
その中ですごくおもしろいなと思ったのは、弟の視点をとおして見えてくる両親や祖父母の姿というのは決してわたしの目で見たそれとはまったく違うのです。わたしよりももっと距離を置いて客観的に家族ではなく他人を見るような視点で見ていて、その視点から見る家族像がとても新鮮だと感じたのです。


なんていうか、わたしは比較的親に精神的にべったりだったというか、精神年齢が低かったんですね。
理屈をこねて反発したりもしたけれど、根本は親への依存心がすごく強かったのだと思います。だから親を家族としてではなく、一人の大人として冷静に見ることも分析することも出来なかったし、そんなのしようと思ったこともありませんでした。


で、ここからがとても大事なのですが、客観的に自分や対象を見つめることで先入観や思い込みを消し去ることが出来るし、さらに対象の本質を捕らえやすくなるとわたしは感じたのです。少なくとも、私よりも弟の方が親や祖母の正しい姿というのを見ていると感じたのです。親/家族補正されていない姿が見えていると。


話がまとまらなくなってきましたが、この作品で真が経験したのもこういうことだとわたしは思うのです。
真は他人の体に入るのだと聞かされていたので、まさか自分が「真」本人だとは思わずに真の家族や友達を客観的に観察することが出来たし、そのおかげでよりよい家族関係を築く礎が出来たわけです。その一連の流れがとてもおもしろかったし、結末が見えてくるあたりのドキドキ感もとても興奮したし、すごくいい作品だと感じました。


チョーお勧めです。

*1:わたしはまだ一回しか読んでいないので、今読んでいる他の本が片付いたらさっそく二回目を読もうと思っています