「天才スピヴェット」見たよ


主人公は、10歳の天才科学者スピヴェット。彼が独りで決行した、アメリカ大陸を横断するという、壮大なスケールの家出が描かれる。自分の才能を理解してくれない家族に黙って、権威ある科学賞の授章式に出掛けたのだ。ジュネ監督は自身初となる3Dに挑戦、独自の世界観を極めたプロダクション・デザインで徹底的に作りこんだ映像が、観る者をまさに夢の旅へと連れ出す。

『天才スピヴェット』作品情報 | cinemacafe.net


10歳で永久機関を作ってしまった天才的な知能をもつ男の子が、仲の良かった弟との死別や父親とのすれ違いに傷ついて一人でアメリカ大陸を横断するというあらすじだけ読むとよくわからないお話でしたが非常におもしろかったです。

優れた洞察力と思慮深さをあわせもっていて10歳でとんでもない発明をしてしまった男の子スピヴェットですが、家庭の中では家族との関係に悩み、学校では無能な教師にいびられて鬱々とするというわりとあるあるな生活を送っているところがまず興味を惹きます。そもそもスピヴェットは自身の発明を誰にも教えないのでこんなすごい発明をしたことは親も先生も誰も知らず、周りからみればちょっと変わった子にしか見えてないのです。

こんなにも恵まれた才能をもっているのに、悩んでいることや困っている様子はわりと同年代の子たちと変わらないところにまずグッときました。


さらに物語の中盤からはスペヴェットが遠く離れたアメリカ東部まで旅をするロードムービーパートがあるのですが、わたしはここがすごく好きです。貨物列車に乗り込んでひたすら東へと旅していたときは、列車が一時停車したその場所でぐうぜん鉄棒をしていた女の子と視線を交差させたり駅に到着したときに偶然居合わせたおっさんとひとときの休息を過ごしたり、そしてホットドッグ屋のおばちゃんのちょっとした優しさに触れたりするのです。

くわえて、列車を降りてからのせてもらったトラックの運転手がすごくいい人だったりと、旅の中で繰り返されるスペヴェットと見知らぬ人たちのいっときの邂逅はどれも心に残るものばかりで観ているわたしにとってもとても大事な出会いとして心に残ります。

そして日常ではけっして得ることができない「何もしなくていい時間のかたまり」は、自分自身の心や家族の気持ちと向き合わせてくれるだけでなく、人と人は出会ったら別れなければならないということやいっしょにいられる時間は一瞬でしかないことも教えてくれるのです。

「しょせん一瞬なんだからむだにしてもいいじゃん」と思うのか、それとも「一瞬だからこそ大事にしよう」と思うのかは人それぞれでしょうが、わたしは一瞬だからこそ大事にしたいなとこの作品を観ながら思いました。


個人的にはラストはそんなに響く内容ではなかったのですが全体としては非常に楽しめました。


ちなみに、当初は2Dで観ようかなと思っていたのですが「観るなら3Dがいいよ」と教えてもらったので3D字幕版で鑑賞してきました。

実際観てみた感想としては、「アバター」以降に雨後のたけのこのごとくわいていた飛び出して見えるだけの3Dとは一線を画した作品であり、風景に奥行きを与えるためだけではなく、「現実と空想」「スペヴェットのいるこちらとあちら」を区別するために立体視が絶妙に使われていてとてもよかったです。こういう使い方を見せられると3Dもいいもんだなと思ってしまいます。

本作はたしかに3Dで観るべき作品であり、3Dならではの魅力にあふれた映像に感動をおぼえました。

観るなら3D!


@TOHOシネマズ宇都宮で鑑賞


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