世界の終わり、あるいは始まり

世界の終わり、あるいは始まり (角川文庫)

世界の終わり、あるいは始まり (角川文庫)

たとえ近所で誘拐事件が起こっても、所詮他人の不幸に過ぎず、自分には関係がない……。


東京近郊で、身代金目的の男子児童の誘拐事件が発生する。身代金はいずれも決して高くない。しかし、犯人は受け渡しの場所には姿を現さず、連絡も途絶えてしまう。

後日、誘拐された児童が遺体で発見されるが、どの子も身代金受け渡しより前に殺害されていたことが判明する。その残忍な犯行は世間を大いに賑わせる。

最初の事件から3カ月が経とうとするある日、会社員の富樫修は、息子・雄介の部屋で似つかわしくない一枚の名刺を見つける。その時は大して気に留めなかったが、それから9日後、4度目となる新たな誘拐殺人事件が発生。被害者の父親の名は、雄介が持っていた名刺の人物と同一人物だった。小学生の息子が一連の事件に何か関係があるのだろうか、そんな考えを打ち消すために事件のことを調べていくが、疑惑は益々深まっていく。

世界の終わり、あるいは始まり - Wikipedia


世間を震撼させるような連続殺人事件にわが子が関わっているとしたら...。
子持ちには考えるだけで憂鬱になる話であり、だからこそ非常に気になるし興奮させられるストーリーなのですが、この作品の肝はストーリーそのものではなく、作品の構成にあります。
ひとつの起点をもとに、複数の結末をパラレルワールドのように展開させる構成は初めて見る形式でとてもおもしろいと感じました。おもしろいテーマを扱った場合、きっとさまざまな結末を思いつくのだと思いますが、それらをすべて一冊の本に納められるこの構成はとてもうまいなと感じました。


ただ、あまりしつこく繰り返されると冗長過ぎてうんざりしてしまうのもまた事実でして、その点だけはちょっと残念でした。


それでもこのような斬新な構成は*1同著者の「葉桜の季節に君を想うということ」を読んだときのような意外性が感じられてとてもよかったです。

*1:一種の夢オチだと考えれば斬新ではありませんが構成の工夫だと思いますので、あえて斬新だと言ってみます