ドルフィンブルー フジ、もういちど宙〈そら〉へ


 世界最大級の沖縄美ら海水族館に、新任獣医としてやってきた植村一也(松山ケンイチ)。海獣課に配属になり、イルカの餌になる魚のひれを切り落とす作業や、プールの掃除を一日中させられ、自分は飼育員ではなく獣医なのにと不満に思っている。イルカのことをよく知らなければ治療もできない、データを見るだけの獣医ならいらない、それが福原館長(山崎努)の考えだった。叩き上げの先輩飼育員・比嘉(池内博之)と激しくぶつかったり、その様子を見守る飼育員・ユリ(坂井真紀)や仲村課長(利重剛)に獣医としての心得を学んだり、七海(永作博美)のカフェで少し癒されたりしながら働く毎日。遠距離恋愛中の恋人・陽子(西山茉希)からのメールが心の支えだが、忙しさと、理想と現実の狭間で徐々にすれ違いを感じている。

 3頭もの子どもを産み育ててきたために水族館の"ビッグマザー"と呼ばれる、イルカのフジにもようやく受け入れられ、沖縄での生活にも慣れてきたある日、突然事件が起こる。フジの尾びれが壊死しはじめたのだ。一也をはじめ、飼育員達は、懸命に治療するが、原因不明の壊死は止められず、尾びれを切除することに。自分の判断、治療は本当に正しかったのだろうか。一也は、獣医師としての自分を責める。一命は取りとめたものの、尾びれを失ったフジは泳ぐことをやめ、プールの隅で浮いているだけ......。

 母親に捨てられたと思い、学校にも行かず毎日フジに会いに来ていた少女・ミチル(高畑充希)は、そんなフジを見て「泳げないイルカはイルカじゃない!」と一也に言い放つ。ただ生かすだけの治療に疑問を感じはじめた一也は、アメリカのタイヤメーカーがウミガメの手びれをゴムで作ったことがあると本で知り、館長に相談。タイヤメーカーのブリヂストンに、フジの人工尾びれを作ってほしいと単身交渉に向かう。

 もう一度フジを泳がせてやりたい──。みんなの気持ちが一つになった時、イルカと人間の暑い夏がはじまった。

http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=7706


MOVIX宇都宮にて。
公開直後という事もあり、結構な人の入りでした。松山君が出ているためか、若い女性が多かったです。


まずは感想。久しぶりにガツンときた作品でした。これから夏だという事でそういう気分的な後押しも評価に加味されているのでしょうが、それでもこの面白さは今年見た作品ではかなり抜けています。見終わった後も帰るのがもったいない気がしてしまい、しばらく席を立てませんでした。本当に見に行ってよかったです。


ストーリーについて。
結構多くのことが詰め込まれていたように感じますが、それぞれが適切な量で抑え、まとめられていたので消化不良にはなりませんでした。特に私は植村が着任後の仕事について不満を感じながらもそれを克服していく部分やフジが人口尾びれをつけて泳げるようになっていくシーンが気に入ったのですが、それぞれのシーンが全体を構成する一部分としてもしっかり機能しているのはすごいなと感心します。個々のシーン単体での良さと全体をとおしての役割分担がとてもバランスよく構成されていたと感じます。
# 見ている時は気付きませんでしたが、終わってからそう感じました


あとは間の持たせ方がすごく絶妙です。
例えば。
人口尾びれが取れてしまいこれからどうするのか話し合っている会議中に訪れた沈黙の長さとか浅いプールにフジを呼び込むそのもどかしさとか、全ての間が絶妙に作られ、保たれ、そして破られていきます。
動物相手ということでいろんな事がスムーズに行かない。各場面で出てくる「間」からそんな事を感じたりしました。もったいぶると言えば言い方が適していないかも知れませんが、うまくいかない事で生じる壁を感じるいい空白になってたと思います。


この作品を見てて海の近くっていいなと改めて思いました。
と言うのも、私は海のそばで生まれ育ったためか、海が大好きです。小さい頃から海洋生物の図鑑を眺めたり、実際に海に行ってはフナムシを追い掛け回したりカニを捕まえたり、あとは釣りをしたりして過ごすのが大好きでした。
作品を見ているとすごく海に行きたくなります。といっても、ただ単に海へ遊びに行くのではなくて海の近くに住みたい、海のある生活に戻りたいと感じました。海の無い県に居るからこその無いものねだりなんですよね、きっと。


でもそんな無いものねだりをしたくなるくらい、海や海洋生物、そしてそこに関わる人たちの織り成す魅力を伝えられる素晴らしい作品でした。ぜひもう一度見に行きたいです。

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