「朝日のようにさわやかに」読んだよ

朝日のようにさわやかに (新潮文庫)

朝日のようにさわやかに (新潮文庫)

ビールについての冒頭から、天才トランペッターや心太へ話題は移り、最後は子供の頃に抱いていた謎の解明へと至る―。虚実の狭間を、流れる意識のごとく縦横に語る表題作他、ホラー、ミステリ、SF、ショートショート等々、恩田陸のあらゆる魅力がたっぷり詰まった、物語の万華鏡。

http://www.amazon.co.jp/dp/4103971088

「図書室の海」以来の恩田さんの短編集でしたが、繰り返し読みたくなるくらい面白いものからさっぱり意味が分からなくて何度も読み返してしまうものまで*1、たくさんの傑作が詰め込まれたすばらしい一冊でした。


特に気に入ったお話の感想を簡単にまとめます。

水晶の夜、翡翠の朝

恩田さんの作品の中でもとりわけ面白かった「麦の海に沈む果実」「黄昏の百合の骨」「三月は深き紅の淵を」という傑作のスピンオフ作品。なので基本的にはこの3作品は(少なくとも「麦の海に沈む果実」くらいは)読んでおいた方が楽しめます。

ご案内

ん?ん?と、読みながらひたすら頭の上に"?"が並んでいるうちにあっという間に読み終わってしまいました。
物語はある人の淡々とした口調に追われるだけという内容なのですが、まるで高速のベルトコンベアーに乗せられているようにあっという間に結末まで連れ去られていくスピード感が心地よいのと、結末のなるほど感はとてもよかったです。

冷凍みかん

ありそうで無さそう。あって欲しい気もするけれど、無い方がいい。
読みながらいろんな考えが浮かんできましたが、穏やかだけどお話としての重さはちゃんと秘めていてとても面白かったです。
こういう人生の一場面の切り出し方はすごく好き。

おはなしのつづき

物語自体は辛い内容だったけど、この表現の仕方がすごく好きです。ストーリーは「楽園を追われて」が一番好きですが、構成はこれが一番気に入りました。
文章の合間合間にのせた言葉が物語の背景にある事実を少しずつ垣間見せてくれる、それはまるでブロック塀に空いた穴から世界を覗き見ているようなそんなもどかしさと発見の喜びが感じられてとてもよかったです。


こういう文章が書けるようになりたいと思える作品。

淋しいお城

夢にみそう(そしてそれは悪夢)

楽園を追われて

学生時代、特に大学生の時の思い出というものは人生の中でもとりわけ自由で輝いていたと感じている人が多いと思います。
新しい生活、新しい人間関係、新しい知識。
そんな楽しかった時期を終え、社会に出て働こうということはまさに楽園を追われることのようですし、そんなことを考えていたら自身の大学時代に思いを馳せたくなりました。


このシチュエーションだけいただいていろいろと自分で書いてみたくなりました。


(関連リンク)

*1:結局、どっちにしても4回くらいは読み直しました