「旭山動物園物語」見たよ


90年代初頭の旭山動物園は、入園者数が減り続け、廃園を迫られていた。存続を願う園長の滝沢(西田敏行)と飼育係たちは、独自のアイディアを14枚分のスケッチへと集約した。そして、飼育係しか知らない動物たちの習性や特徴を、直接入園者へ説明するワンポイントガイドや広報誌の発行、さらには市民への講演などを行った。そして、徐々に市民の支持を取り戻して行った。そんな矢先、人気者のゴリラが感染症にかかり、突然死んでしまう。マスコミを大きく賑わしたこの事件により、営業停止に追い込まれる。存在価値を問われる旭山動物園――。こうして、数々の試練と苦境を乗り越え、奇跡の動物園と呼ばれるまでに至った、園長と飼育係たち、そして動物たちの感動のサクセスストーリー。

『旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ』作品情報 | cinemacafe.net

宇都宮ヒカリ座にて。


入場者が減ってしまい閉園の危機に陥った旭山動物園が再生を目指した実話を元にした映画だと聞いていましたが、まあ何ていうかすごかった...。動物園の再生というのはたしかにストーリーの中心ではありましたが、個人的な感想としては別にこの再生への至る道を描かなくてもさほど映画には影響がなかったんじゃないかと。公開当時からあまりいい噂の聞かない作品でしたが、その悪評にたがわぬ強烈な個性を放っていた作品でした。この作品のインパクトはまさに圧巻の一言に尽きるほどでして、これを観た直後にゼブラーマンを観たのですが、最初からバカバカしさを売りにしているゼブラーマンでさえもこの作品のくだらなさにはかないませんでした。
もし観る順番を逆にしていたらどっちがゼブラーマンかわからなくなっていたかも知れません(嘘)。
シマウマだしね ← 適当


さて。動物園の再生をテーマに掲げていた本作ですが、実際にこの作品で描かれていたのは動物の魅力でも動物園の未来でもなく、飼育員たちのどうでもいい日常です。人間と関わりたくないからという理由で動物園への就職を決めた中村靖日や動物保護団体の一員として動物の解放を要求するために乗り込んできたくせに園長の寝言のような言葉に感化*1されて動物園で働くことを決めた前田愛。さらにはメスゴリラとの仲を冷やかされてきれる岸部一徳や担当しているチンパンジーに子どもが生まれたことが嬉しくてはしゃいでいたら象に殴り殺された長門裕之
このどこで感動すればいいのか....。
わたしはもう最初から最後まで笑いっぱなしでしたが、これ、本当にこういう作品が撮りたかったのかどうか津川さんにうかがいたいです。あと実際に出来上がった作品を観てキャストやスタッフの方々がどう感じたのかも。これに満足したり感動した人がいるとはとても思えないんですよね。びっくりした人はたくさんいるだろうけど。


で、ひとつだけこの作品がこうなってしまったポジティブな可能性として思いついたのはこれは行動展示に主眼を置き、メタな視点で「旭山動物園」を扱ったではないかということです。
通常の動物園は、単に動物を配置しておく形態展示か、動物の生態を見せるための生態展示をしているそうですが、それに対して旭山動物園は動物の能力を引き出すための展示方法である行動展示を行ったことで一気に注目を集めたそうです。
本作では旭山動物園が行った動物の行動展示のすばらしさはほとんど垣間見ることが出来ない*2のですが、動物園で働く飼育員たちの行動展示は常に行われていて、それを飽きるほど観察することが出来ます。正直わたしは最後の方は飽きてました。
動物ではなく飼育員の行動展示を描きたかったのだとすればそれはそれですごいことなのですが、そういう視点で振り返ってみると老人ホームで余生を過ごす人たち*3とそれを世話する人たち*4を描いた感動作のようでもあり胸が熱く....なりません。
やっぱりおかしいよ。


GW初日からとんでもない作品を観てしまったなあ....と思うと同時に、いまさらだけどこれを映画館で観られてよかったなとも思ったのでした。これもいい経験。


公式サイトはこちら

*1:そもそも動物を人間が飼うなんて傲慢だ、解放しろ!と怒って乗り込んできた人たちが、解放するのは生態系を壊すだろ?と逆ぎれされただけで引っ込むだけでも相当異様なシーンなのですが、それだけでなくそれに感動しちゃうってのは正直どうかと思いますよ

*2:後半にちょっとだけ紹介あり

*3:岸部一徳長門裕之方面

*4:主に前田愛