「アバウト・タイム」見たよ


イギリス南西部に住む青年ティムは、自分に自信のなく年頃になっても彼女ができずにいた。迎えた21歳の誕生日、一家に生まれた男たちにはタイムトラベル能力があることを父から知らされる。そんな能力に驚きつつも恋人ゲットのためにタイムトラベルを繰り返すようになるティム。弁護士を目指してロンドンへ移り住んでからは、チャーミングな女の子メアリーと出会い、恋に落ちる。ところが、タイムトラベルが引き起こす不運によって、二人の出会いはなかったことに…さらにどんな家族にも起こる不幸や波風は、どんな能力でも回避することはでいないのだと知ったティム。時間旅行をしながら、本当の愛と幸せは見つかるのだろうか。

『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』作品情報 | cinemacafe.net


わたしが大学院にかよっていたころ、「ぼくのなつやすみ」というゲームがプレステで発売されました。



母親が臨月に入ったために父親の実家に預けられた男の子が8月1日から31日までの1ヶ月間を田舎で過ごすというゲームなのですが、虫取りをしたり釣りをしたりできるというのでおもしろそうだなーと思って手を出してみたのですが、期待どおりにこれがものすごくおもしろくて思いっきりはまってしまいました。

そのころ住んでいたのは山形ですからちょっと足をのばせば「リアルぼくのなつやすみ」的なことができないわけでもなかったと思うのですが、当時すでに22歳でしたのでさすがにひとりで虫取りに行くのはつらいお年頃でした。虫取り網をたずさえて山をかけめぐる22歳というのはさすがにちょっと危険な気がしましたので、せめてゲームの中でそれを疑似体験できるというのはすごくうれしいことでした。

このゲームは日々の忙しさを忘れられる心のオアシスのような存在でして、買ってしばらくは毎晩の楽しみになっていました。


そしてその2年後の夏に「ぼくのなつやすみ2」が発売になりました。



就職して1年目の夏。わたしは24歳になっていましたが、「ぼくのなつやすみ」の楽しい思い出をまた味わいたくてすぐにゲームを購入しました。

ぼくのなつやすみ2」のもっとも大きな特徴は舞台が海だという点なのですが*1、海を泳ぎまわったりできるという新しいアクションも加わってたいへん楽しいゲームにパワーアップしていました。前作以上に夏休みらしい夏休みを満喫できて心の奥底から満足しました。


そんなわけでとりあえずひととおり遊んでクリアしたわたしは、2回目のプレイは攻略サイトをみながらやろうと思いついたのです。

というのも、このゲームはたくさんのイベントが隠されていてふつうにプレイしただけではそのすべてを発生させることはとてもむずかしいのです。そのため、すべてのイベントを見るためには攻略本か攻略サイトの力を借りる、つまり答えを見ながらゲームをそのとおりにすすめていくのがもっとも近道でしたが、いざ攻略サイトを見ながらゲームをやってみたらあっという間に飽きてしまいました...。


結局「何が起きるか分からないことを楽しみながら夏休みを過ごす」のがこの「ぼくのなつやすみ」シリーズのもっとも重要な要素だったので、その一番大事な部分を捨ててしまい、ただ答えを見ながらイベントを消化しようとなると途端におもしろくもなんともないものになってしまったのです。

これってじつはゲームに限らずどんなことにでも言えることだと思っていて、つまり物事を徹底的に客観視して俯瞰し過ぎたり何でもかんでも合理化し過ぎると、目の前にあるものを心から楽しめなくなることが多いのではないと思うのです。


話を映画に戻しますが、本作は20歳になるとタイムスリップすることができる能力が発動するという家系に生まれたある男性が過ごす日々を描いた作品ですが、その能力をつかって人生を何度もやり直す様子のおもしろさが詰まってたいへんすばらしい傑作でした。こういうとんでもない傑作に出会えるから劇場に通うのって止められないよなと心から思わせられる作品でした。


本作を観終えて思ったのは、自分はいまこの瞬間を生きることの大事さ、価値をもっと理解すべきじゃないかということでした。

わたしは平日の多くはやらなければならないことに追い立てられて過ごしているために「早く土日になればいいのにな」と平日をただただやり過ごすことばかり考えていました。

でも、そうやってなんとなくやり過ごしてしまいたくなる日々だって二度と繰り返すことのできない大事な時間でありかけがえのない何かを得られたかも知れない時間だということをこの作品は教えてくれます。

ただ漫然と過ごしていたある瞬間に、もしかしたら生涯忘れられないような一瞬があったかも知れないし、そして生きているその瞬間と向き合っていなかったせいでそういった一瞬を逃していたかもしれないと思うと悔しくてしょうがありません。

そしてそんなふうに考えると、冒頭で書いた攻略サイトを見た途端に「ぼくのなつやすみ」がつまらなくなった話というのは、週末にやりたいことに没頭することを楽しみにして平日はただただこなすだけの時間ととらえて過ごしている毎日がとてもつまらなく感じていることとものすごくリンクすることに気付きます。


いまを生きる。
文字にしてしまうとすごく陳腐ではあるのですが、そのことについてあらためて考えずにはいられなくなる作品でした。最高によかったです。


@TOHOシネマズ宇都宮で鑑賞


公式サイトはこちら

*1:ぼくのなつやすみ」は舞台が山メインでした