「8月の家族たち」見たよ

8月のある真夏日。父親が失踪したと知らされ、オクラホマにある実家へ集まった三姉妹。真面目すぎて暴走しがちな長女・バーバラ(ジュリア・ロバーツ)と、反抗期の娘(アビゲイル・ブレスリン)、実は別居中の夫(ユアン・マクレガー)。ひとり地元に残り秘密の恋をしている次女・アイビー(ジュリアン・ニコルソン)。自由奔放な三女・カレン(ジュリエット・ルイス)と、その不審な婚約者。彼らを迎えるのは、がんで闘病中だが気が強く、率直で毒舌家の母・バイオレット(メリル・ストリープ)と、その妹家族。生活も思惑もバラバラな“家族たち”は、つい言わなくてもいい本音をぶつけ合い、隠されていた“家族の秘密”が次々に明かされていく…。

『8月の家族たち』作品情報 | cinemacafe.net


さいころ、子どもの目から見た親というのは「子どものようにすぐ泣かないし何でもできる」大きな存在のように見えました。

外で働いてお金をかせいできてそのお金で養ってくれたり、日常の雑事をこなして身の回りの世話をしてくれたりと、自分が生きていられるのは親のおかげであることは明確であり、その点まったくあたまの上がらない存在でした。ときに口うるさくあれこれ指示されてイラッとさせられたり、自分の意見を頭ごなしに否定されたり、嫌だということを強要されたりということはありましたが、それでも親に対する敬意というか「親に逆らってはいけない」という価値観は根強く埋め込まれていたために強く反発することはほとんどありませんでした。

この関係は改めて言うまでもなく「親が主であって子が従である」わけですが、10歳になるくらいまではこのことに何の違和感もなく過ごしていました。親の方が偉いなんて当然だろうと。

もちろんいまでも育ててくれた親に対する敬意みたいなものはもっているのですが、わたし自身もいい加減いい年の大人ですし経済的な観点から見てももう完全に自立をしているわけですから以前のように親に完全に服従ということはありません。

血縁関係だけ見れば親と子の関係というのはいくら年を重ねても「親 vs 子」と変わらないのですが、一方では絶対値としての年齢そのものに比べて親と子の年齢差というのはどんどん小さくなっていっていつの間にか「大人 vs 大人」に変わっていきます。このとき、親は、子との関係を血縁関係である「親 vs 子」で理解しようとしているためにいつまで経っても親から見て子どもは子どものままですが、子どもはそうではありません。

子どもは日々成長していく中で、それまでは絶対的な存在だった親にも人間らしさというか決して完全無欠な存在ではないことに気付いていきます。子どもは自身の成長とともに親を絶対的な存在から一人のふつうの大人へと認識を変えていくわけです。


本作は離れて暮らしていた3人の娘と妹が父の死をきっかけに母の住む家に集まったんだけどみんな自分勝手でさあ大変というお話でしたが、時間の経過とともに関係性の変わっていった家族がひさしぶりに集まったことでその違和感を存分に味わって家族のめんどくささを堪能する様子が丁寧に描かれていてたいへんおもしろかったです。

題材に家族、しかもこういうめんどくさい部分をきっちり描く作品ってやっぱりおもしろいなと思います。


@TOHOシネマズ宇都宮で鑑賞


公式サイトはこちら