「グッモーエビアン!」見たよ


元パンクバンドのギタリストのアキ(麻生久美子)と、しっかり者の15歳の娘・ハツキは親子で2人暮らし。ある日、そんな2人の下へ、海外を放浪していた自由人でアキと一緒のバンドでボーカルだったヤグ(大泉洋)が何の前ぶれもなく帰ってきて――。

『グッモーエビアン!』作品情報 | cinemacafe.net

(注意) 作品の内容に触れている部分があるので未見の方はご注意ください。


TOHOシネマズ宇都宮で観てきました。

音楽にはまったく詳しくないのですが、音楽(主に歌やダンス、バンド)を題材として扱った映画や本はすごく好きです。
すぐに思い出せるものだけでも「ソラニン」や「バーレスク」なんかすごく大好きで、心に抱えているものを歌にのせて観客にぶつけるそのさまがとてもいとおしくてたまりません。本音を他人にぶつけるのってすごいむずかしいですし、思い切って伝えたところでなかなか伝わらなかったりするのですが、歌にのせることで伝える勇気もわいてくるしそして伝わるような気がするのです。

思いつく唯一の例外は「BECK」かな...。思い出したらちょっとブルーになってきました。


本作「グッモ―エビアン!」は元パンクバンドに所属していた女性アキがシングルマザーとして娘といっしょに過ごす日常を描いた作品ですが、小さな出来事のひとつひとつが物語のエピソードとして丁寧に積み上げられていて、その積み重ねによって日常が自然と作りあげられていくすばらしい作品でした。
大げさで分かりやすい、もしくは印象に残りやすい話をただ並べるだけでなく、日常に転がっていそうな小さなイベントをさりげなく提示し続けることで、この作品の世界に自分も入り込んでいるようなさっかくをしそうになるくらいのめり込んで見ちゃいました。すごく作りがうまいです。


さらにその日常に不意に入り込んできたのが、母親のアキと同じバンドでボーカルをしていた男性ヤグでして、世界中を放浪する旅から帰ってきた彼は帰るところがないのかアキたちのアパートでいっしょに暮らし始めます。彼はたいへん人懐っこい上に自由気ままで人間としての魅力は十分あるのですが、30歳を超えているのに仕事もせずに自分のやりたいことをやり、そしてアキの家に居候したりバンド仲間の家で酒を飲んで毎日を楽しく過ごしているのです。


それに対してアキの娘であるハツキはというと、唯一の同居者だった母親が働いているために身の周りの細事はすべて自分でやらなければならなかったり、母親から「自分自身のことは自分で決めるように」と言って聞かせられていた影響のためか、年齢以上に自立しています。


根がマジメなうえにちょうど大人に反抗したくなる年齢のハツキは、自由に生きているヤグやそのような生き方を許しているアキに反発をおぼえ、ときに直接反抗するわけです。自分だけが割を食っているような、どこかのけ者にされているようなハツキの心境もすごくよくわかるし、だけどアキやヤグの言い分もよくわかるんですよね。


そんな両者の溝を少しずつ埋めていくところ、つまり家族が作られていく過程がとてもうまく描かれているよい作品でしたし、その両者の気持ちを媒介する手段としてバンドの演奏シーンが使われているところが個人的な好みに合致していてとても気に入りました。


 家族とは単なる血縁のことではなく「互いを必要としながらいっしょに生きていく共同体」のことであるとずっと思っています。そういう意味ではこの3人はきっといい親子になれるだろうと思ったし、なって欲しいなとも思いました。


ちなみに、上でも少し書いたとおりこの作品にはヤグ演じる大泉洋さんが歌を歌うシーンがあるのですが、これがもうあまりによ過ぎてびっくりしちゃいました。あまりにうま過ぎたので観終わるまでは誰か吹替えで歌っているんじゃないかと思っていたのですが、帰ってから調べたらご自分で歌っているそうでして二度びっくりしました。

あの歌声を劇場で聴くためにこの映画を観たとしてもぜったいに後悔しないと断言します!


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