「黄金を抱いて跳べ」見たよ


過激派や犯罪者相手の調達屋などをしてきた幸田(妻夫木聡)は、大学時代の友人・北川(浅野忠信)から住田銀行本店地下にある15億円の金塊強奪計画を持ちかけられる。北川がメンバーに選んだのは銀行システムエンジニアの野田(桐谷健太)、自称工学部留学生で国家スパイの裏の顔を持つモモ(チャンミン)、さらに北川の弟・春樹(溝端淳平)、元エレベーター技師の爺ちゃん(西田敏行)が仲間に加わり、6人の男たちが企んだ、大胆不敵な計画がスタートする――。

『黄金を抱いて翔べ』作品情報 | cinemacafe.net

TOHOシネマズ宇都宮で観てきました。

さまざまな方面に秀でた人々が集まって銀行を襲おうぜ!という景気のいいお話かと思いきや、終始みんなが暗い顔でどんよりと犯罪にいそしんだり人生を棒に振ったりするというなんとも気の滅入る作品でした。仕事上がりに眠くもならず、さらに最後まで楽しく観ていられたことを考えると出来はすごくいい作品だとは思いましたが、また観たいなとはあまり思えない内容でした。


本作が描くのは「身の丈に合わないものを手に入れようとした人たちの姿」。


「欲求は生きるためのエンジンである」と言ったのは誰だか忘れましたが、生きていく上で「あれが欲しい」「これがしたい」という欲求は不可欠だとわたしも思います。そういった欲求があった方が積極的に生きていく理由がもてますし。
一般的には欲深いことはあまりよいこととはとらえられていませんし、たしかにあまりに強欲だとそれはそれでちょっと...という面もありますが、深過ぎない程度の欲というのはどうしても必要だしそれを満たそうとすることが生きることだとわたしは思います。


ただ、どんな欲求もすぐに満たすことができるのかというとそうではなくて、欲求によっては「満たしにくい欲求」というのも当然あります。「満たしにくい欲求」といのは反社会的だったり倫理に反するために満たされにくいものもありますが、ここで申し上げているのはそういうものではなく、欲求を満たそうとする人の社会的立場や信用が不足しているために満たすのがむずかしいというものを想像しています。


つまり、身の丈に合わない欲求を満たそうとしているケースがこれに合致するわけですが、そういう欲求を満たそうとしたときにどうなるかというと相応のリスクを負わないといけなくなるわけです。本来できなかったことをやろうというわけですから、できることとやろうということの間にはギャップがあるし、そのギャップを超えるためにはリスクをはらむアクロバティックな対応をしなければならない。


本作は本来は手にすることができないような大金を手にするために、数々の無理を重ねて自分や身の回りの人たちを危険にさらす姿を描いていましたが、失うものがない人はともかく、大事なモノを既に手にしている人がそれを失ってまでお金に執着する姿を見るとややゾッとせずにはいられませんでした。

お金は欲しいけどそこまでつよくのぞむのか...と思う気持ちと、自分ももし大金を目の前にしたらそんなことは言ってられないのかも知れないなと思う気持ちが同時にわきあがってきました。



まるで大きな石の裏側を覗き見たような気分になる作品だったし、「きっと社会の裏側に生きる人というのはこういう感じの生活を送っているんだろうなあ」と思わせるような視点での切り出し方はすごくよかったかなと。

妻夫木君も浅野さんも本当にその筋の人たちみたいで「ああすごいなあ」としみじみ見入ってしまいましたよ。


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