「SHAME−シェイム−」見たよ


N.Y.でエリートサラリーマンとして生活するSEX依存症の兄の部屋に転がり込んだ、恋愛依存症にしてリストカット癖のある妹。全く相容れない2人は、共に生活を送ることで一層孤独の影を深め、事態は悪化へと転がり始める。そんなある日、男のもとに衝撃的な連絡が入る――。彼をセックスに傾倒させていく理由とは――?

『SHAME−シェイム−』作品情報 | cinemacafe.net

宇都宮ヒカリ座で観てきました。


本作は性依存症の男性ブランドンの日常を描いた作品でしたが、性への強い執着が平凡に生きる上での枷となり、徐々にペースを崩して堕ちていく男性の姿に終始いたたまれない気分になりました。わたしはなにごとにもハマりやすい人間ですので、いわゆる行動依存と呼ばれる依存症に陥ってしまう心境とそこから抜け出せない辛さはすごくよくわかります。

ですが、性依存は性的欲求という誰もがもっている基本的な欲求と結びつけて想像することができたので、他の行動依存以上にその中毒性に苦しむ心境と辛さが容易に想像できてしまい、そのあまりのおそろしさに打ち震えながら鑑賞しました。


自分の中にコントロールできない部分があるって本当に怖いですね...。


さて。手始めにこの性依存症という病気ですが、具体的にどういうものなのか調べてみました。

セックス依存症」という呼称が用いられることもあるが、依存する対象は実際に相手のある性交渉だけでなく自慰行為やポルノへの過度な耽溺や収集、強迫的な売買春、乱交、露出や覗き行為、性的ないたずら電話やインターネットを介したアダルト・チャットなど全ての性的な活動が考えられる。 依存症患者は性的な興奮や刺激に溺れることが習慣化し、徐々に自己コントロールを失う。 ギャンブル依存や買い物依存などと同じく「行動(process)への依存」に分類される。

性依存症 - Wikipedia

セックスに限らず、とにかく性的欲求を満たせるものに依存するというのが症状だそうですが、たしかにこの作品でもアダルトチャットの存在やトイレでオナニーに耽る様子が描かれていました。さらに会社のPCにエロ動画が入っており、性欲が旺盛だというレベルとはあきらかに一線を画している様子がはっきりと描かれていました。


依存症について調べてみると、薬物依存も行動依存も依存症になるその背景には生活環境の問題があると言われています。

上で引用したWikipediaを読むと、性依存症は幼いころに十分な愛情を受けなかったことに起因することが多いそうですが、ブランドンの妹も恋愛依存的な行動を繰り返している描写からも彼の育った環境に問題があったと考えられるのです。つまり依存症になってしまった原因がすべて彼にあるわけではないことは容易に想像できるのですが、一方で何も知らない他者から見ると行動依存症に陥っている人は本人が欲求に負けている甘えん坊将軍にしか見えないんです。


でもあまりのハードさに体調を崩してしまうほどセックスに執着するブランドンの姿を見てしまうと、これを自己責任だとか甘えで切り捨てるのはかわいそうでならないなと思わずにはいられません。


本人が抱える辛さと周囲がその人を見て受ける印象のギャップの大きさ。


自分の置かれている状況の辛さを理解してもらえないことって本当に怖いよな...と思わずにいられませんでした。


そしてなぜここまでブランドンの視点を追いかけて、さらにブランドンの置かれている立場を慮りながら作品を観てしまったのかと言うと、私も性欲に負けそうになって自分がコントロールできなくなりそうになる経験というあるからなんですよね。もちろんブランドンのような衝動的な欲求ではありませんが、日常のふとした瞬間にそういうときがあってそんな時はハンドルが壊れた車に乗っているようなそんな不安を覚えるのです。

7年前に毎晩走るようになってからは割とそういうこともなくなったのですが、でも性欲が無ければいいのにというのはずっと本気で考えていたことでしていまでもそう思っています。


性欲を無くすというのはいわゆる去勢するということになるのでしょうが、そうしてみたいと思う一方で、性欲のまったくない自分というのがまったく想像出来ないし、性欲がまったく無くなった自分がどこまでいまの自分と同じでいられるのだろうと思うとそれはそれで不安だと感じるのです。


ただ、こうやって依存症になって自分を抑えられなくなった人の姿を見てしまうと、性欲だけすっぽり抜きたいなということをあらためて考えずにはいられませんでした。



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