「悪の教典」見たよ


蓮実聖司(伊藤英明)は生徒から絶大な人気を誇る高校教師。学校やPTAの評価も高い蓮実だったが、実は彼は他人への共感能力をまったく持ち合わせていない、生まれながらのサイコパスだった。その人間離れした知性と行動力で周囲の人間たちを自由に操り、自らの目的のためには殺人も厭わない。いじめやモンスターペアレンツなど学校が抱える様々なトラブルや、自分の目的の妨げになる障害を取り除いていき、次々と死体の山を築きあげていく――。

『悪の教典』作品情報 | cinemacafe.net

TOHOシネマズ宇都宮で観てきました。


穏やかな表情や誠実そうな風貌からわりと「誠意のある人」「いい人」を演じることの多かった伊藤英明サイコパスに挑戦するというので楽しみにしていましたが、期待していた以上に異常者然とした立ち振る舞いをみせてくれてすごくよかったです。ここだけの話ですが、わたしは以前から彼にはいい人ぶらせるよりもキレた演技させた方がぜったいにおもしろいだろうなと思っていたんですよ。



こんなにやさしそうな先生が....

こうなるわけですね。いいね!(フェイスブック風に)


と言っても、別に伊藤英明マジックマッシュルームを吸って暴れた事件があったからそう思ったわけじゃないですよ!


なんかこの映画の話をすると、かならず「ああ、あのマジックマッシュルームの人ね!」とあらぬ方向で盛り上がってしまうですが、けっしてそうじゃなくて、こういういっけん真面目そうに見える人が目も当てられないくらいのキチガイを演じたらおもしろいだろうと思っていただけです。


っていうかね、みんなあの事件のこと忘れて無さすぎですよ。

もうこの映画のことを話すとなると、かならず触れなきゃいけないのか?っていうくらい、誰もが口をそろえてこのマジックなんとかの話になるのですが、あれってもう11年以上前のことなんですよね。あたらしい情報が常にあふれているこの世の中では、去年の流行語大賞(参考リンク)のことすら誰もおぼえてなさそうなのに11年前のことを多くの人がおぼえてるってこれすごいことですよね。


つまりあれだけ誠実そうに見えていた彼が、当時合法だったとは言え、幻覚症状をもとめて薬に手を出していたということがどれほどのショックを与えたのかは言うに及ばないというか、まあ意外っちゃ意外でしたよね。清純そうに見えていた同期の女の子が、裏では同期の男子ほぼ全員とヤッていた的なそんな衝撃に近いのかも知れません。


話がそれちゃったし、もはやよくわからなくなってきた...。

で、話を戻すとまさにわたしが期待していたとおり、いや期待以上のキチガイっぷりを見せてくれてたので最初から最後までとても楽しく鑑賞できました。あまり声高におすすめできる作品ではありませんが、シネコンで観られる邦画でここまではげしく異常者の姿を描いた作品ってそうそうありませんので、15歳以上の方ですこしでも興味のある方はぜひ映画館で観ていただきたいです。


さて。

作品の内容について少し触れておくと、前半は伊藤英明が自身が異常者であることを隠しながら高校の先生として日常を送るシークエンスであり、後半は自身の本性がばれそうになったのでごまかそうとしたけどごまかしきれなくてついに学校に残っていた全員を殺すことになるというストーリーです。


個人的には前半がすごく好きで、誰もが日常をおだやかに送っている中でその間隙を縫うように悪意の糸を垂らしていって人々を絡め取っていくところがすごく怖くてたまりませんでした。いっけん、広大な野原のようなただただ平坦に広がっている日常の中に隠れるように落とし穴が点在しているように見えて怖いのなんのって。

以前「ラブリー・ボーン」を観た時にも思ったのですが、日常が普通であればあるほどそこに落とし穴が隠されているなんて誰も思わないし、思わないからこそついハマってしまうわけなんですよね。日常の演出がすごくうまかっただけに、そこにある落とし穴に自分もハマってしまうんじゃないかという気がしてつい身震いしてしまいました。


あと後半の学校を占拠して生徒たちをするところはちょっと展開が早すぎたかなという印象を受けました。もちろんあのくらいの早さで展開した方がリアリティや臨場感が出るのですが、個人的にはもうちょっと生徒側が抵抗してがんばって欲しかったなという気がしました。高校生が束になってもかなわないというところに、異常者の異常たる姿を見せたかったのかも知れませんけど。


わりとツッコみどころはあるんだけどそういう何か言いたくなるところも含めてすごくいい作品だったなと思います。



山田孝之の変態役もかなり板についていてよかったですね。



公式サイトはこちら