「ヴァンパイア」見たよ


仕事熱心で認知症の母を介護する高校の生物教師・サイモン。一見、真面目そうな外見とは裏腹に、彼は若い女性の血を飲みたいという欲求を抑えられずにいる。血を求めて自殺サイトを徘徊し、自殺志願者の娘たちを言葉巧みに誘い出していくのだが…。

『ヴァンパイア』作品情報 | cinemacafe.net

チネチッタで観てきました。

予告はいまいちおもしろそうには見えなかったのであまり期待していませんでしたが、その期待値の低さが功を奏したのか本編は割とおもしろくて楽しめました。変わった演出が散見されたのと、英語が苦手なわたしが不自然さをおぼえるくらい日本語の直訳っぽい英語のセリフが気になりましたが、でも作品の評価を覆すほどの違和感でもなかったですし、それよりは作品のおもしろさの方が勝っていた印象を受けました。


本作のタイトル「ヴァンパイア」というのは、若い女性の血が飲みたくてたまらないという変わった性癖をもつ男性サイモンを主人公とした物語であるがゆえのタイトルなのですが、このサイモンのキャラクターというか設定がちょっと変わっているのがおもしろいです。

一般的に、ヴァンパイアというと「血を飲まないと生きていけない」モンスターであり、生き血を得るために強引に血を得ようとするおそろしい化け物として描かれることが多いです。人間が水を飲まないと生きていけないように、ヴァンパイアにとっては血を飲まないと生きていけないというところでしょうか。


ところが本作のサイモンはあくまでただの変態ですから、血というのは必需品というよりも嗜好品に近くこれを飲まずとも生きていけます。でも飲みたい、すごい飲みたいというわけで、自殺志願者の女性をうまくだましたり言いくるめて血をいただくという姑息なことをするわけです。

もちろん自ら死を望んでいる人を選んで血をいただいているとはいえ、人を殺して血を抜いてしかもそれを飲んでいるわけですからサイモンだって立派な変態です。でもそこには彼なりの線引きがちゃんとあって、決して普通に生きている人を襲って血を奪おうとは思っていません。彼が血を得るために生を奪うのはあくまでこれからすぐに死を選び取ろうという人だけにこだわっているところに、自分が普通ではないということを自覚しながらも自分なりに普通という枠におさまろうともがいているように見えたし、それとても悲しいことのようにも感じたのです。




自殺しようとしている人を殺そうと、日常を送っている普通の人を殺そうとどちらも殺人であることには変わりないし、それが発覚すればどちらも殺人罪として裁かれることになるのでしょうが、でも彼にとってはその違いは大きな意味があるんですよね。


最初は女性の血を飲みたいだけのただの変態だと思っていたのですが、そんな違いにこだわらずにはいられない彼の人物像はとても魅力的に見えてしまいどうにも彼のことが気に入ってしまいました。気に入ったというか共感をおぼえたというか、自分に自分で言い訳してしまうその小ささに惹かれてしまったのです。


ぜんぜんまとまりませんが、リアリティのない話なのに「あー、分かるなあ」と言いたくなる部分が多い作品でした。


ちなみに、今回は川崎で映画を観たのですが川崎と言えばということで小覇王さん(@susahadeth52623)をお誘いして観てきました。何となく無理やり召喚してしまった感もありますが、お付き合いいただきありがとうございました(ぺこり)。


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