「嗤う分身」観たよ


内気で要領が悪く、存在感の薄い男サイモン(ジェシー・アイゼンバーグ)。会社の上司にも同僚にもバカにされ、サエない毎日を送っている。コピー係のハナ(ミア・ワシコウスカ)に恋をしているが、まともに話しかけることもできない。そんなある日、期待の新人ジェームズが入社してくる。驚くべきことに彼は、サイモンと全く同じ容姿を持つ男だった。何一つサエないサイモンに対し、要領がよくモテ男のジェームズ。容姿は同じでも性格は正反対の 2 人。サイモンは次第にジェームズのペースに翻弄され、やがて思いもよらぬ事態へと飲み込まれていく…。

『嗤う分身』作品情報 | cinemacafe.net


ある日、自分と同じ顔なんだけど性格は真逆で自分にないものをもっている人があらわれてすべてを奪っていくというお話。

まるで悪夢を見ているような重苦しい空気と気の滅入る展開があまりにあまりで、「これはきっと悪い夢を見ているというシーンで、このあと目が覚めてから本題が始まるに違いない」と思っていたのですが、結局そのまま最後まで物語が紡がれてしまいました...。

もう最初から最後まで悪夢の中で過ごしているような感じでして、ほとほと疲れ果ててしまいました。


おもしろくなかったとは言わないし観終えてからずっとこの作品のことを考えるくらいには興味深い作品ではありましたが、非常に不快で観るのがつらい内容でした。ミアちゃんはもうものすごくかわいかったんだけど、でもそれだけでは最後まで楽しく見るなんてことはできなくてちょっとしんどい映画鑑賞になりました。


そういえば、観終えてからひととおりあれこれ考えてみて思ったのは、冒頭の展開が結局すべてだったんじゃないかということです。


冒頭、ひと気のない電車の中で何をするでもなくただ座っていたサイモンの前にとつじょ男性が立ち、「そこはおれの席だからどけろ」と言い放つところから物語は始まります。

舞台となった電車というのは指定席があるようなものではなくごくごく普通の電車ですから誰かの席があらかじめ決まっているわけもなく、くわえて周囲には誰もいないので席はどこもかしこも空いていてサイモンがどけなければ座れないような状況ではないことは明らかです。


なぜ自分が座っている場所を譲らなければならないのか。

サイモンは見知らぬ相手からの不当な要求に疑問を抱き、そしてそれはおかしいと思うのですが、でもそのことを直接言葉にはできなくて渋々とは言えあっさりと自らの席を明け渡してしまいます。見知らぬ相手に席を譲る理由など何もないのに、相手から少し強く迫られただけで自らの居場所をあっさりと渡してしまうサイモンの気弱さ。

観ているときはなんとなく不愉快なシーンだなくらいに思っていたのですが、ここで描かれている「自らの居場所でさえ見知らぬ相手に譲ってしまうサイモンの性格」がこの作品のコアでありすべてなんじゃないかと感じたし、大げさにいえばこの作品のエッセンスがギュッと凝縮されているんじゃないかと思いました。



おもしろくないわけではないと上で書きましたが、やっぱりおもしろくはなかったですね。
書きながら思い出していたらだんだん腹が立ってきました。


@宇都宮ヒカリ座で鑑賞



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