「R.P.G.」読んだよ

R.P.G. (集英社文庫)

R.P.G. (集英社文庫)

住宅地で起きた殺人事件。殺された男性はインターネットの掲示板上で「疑似家族」を作っていた。殺人に関わりが? 虚実が交錯し、見えてきたものは…文庫書下ろしミステリー!

http://www.amazon.co.jp/dp/408747349X

昔、"人"と"人間"の違いって何だろうと思って調べたことがあります。

"人"は不特定の人を指す言葉だそうでして、たとえば人類全体とかある集合全体みたいな対象が漠然としているときは"人"を使うようです。対して、"人間"というのはもともとは"人が暮らしている社会"をあらわす言葉だったようなのですが、それが転じて、そういった人々が暮らす社会で生きる人をあらわす言葉にもなったそうです。


簡単にまとめるとこんな感じ。

    • 人   人類
    • 人間  人が集まって形成した社会の中で生きている人のこと


諸説あるのでそうじゃないよというご指摘もあろうかと思いますが、ここではとりあえずこれで押し通しちゃいますが、つまり人はただ生きているだけではただの人で、社会の一員として生きることで初めて人間になるということだそうです。言い換えれば社会の中で割り当てられた役割を演じるのが人間なのです。


さて。
話を本の感想に戻しますが、本作はさまざまな局面で与えられた役を演じる人々の姿を描いた作品でしたてとてもおもしろかったです。人が集まれば、そこにコミュニティができるし、コミュニティができてそこで生きていこうと思ったらそこで与えられた役割を演じるしかないのですが、その与えられた役を演じようとしない人というのも世の中にはいるわけです。そのことが周囲に与える影響の大きさというのは与えられた役によって違うのですが、家族のような小さくて密接なコミュニティの方が周りに与える影響は大きいんだなということを嫌というほど思い知らされる展開に鬱々としました。

わたしなんか、自分が親としての自覚が足りていないと思うことはありますし、実際に親という役を演じてきれてないなと思うことも多々あるわけで、そういう自分の至らなさを全力で投影したような人が登場人物に出てきていたせいで終始いたたまれない気分で読む羽目になりました。

いろいろと思うところはありますが、ひとまず大いに反省します。


ちなみに本作に出てくる刑事は、同著者の別の作品に出てくる刑事さんだそうでして、ある意味本作はその作品のスピンオフみたいな位置づけになるようです。「模倣犯」と「クロスファイア」がその作品なのですが、本書がとてもおもしろかったのでその2作品もぜひ読んでみたいと思います。


本書自体もとても面白かったのですが予想外に新しい楽しみができました。