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ヴァン・ホッパー夫人の付き人としてモンテカルロのホテルにやってきた「わたし」は、そこでイギリスの大金持ちであるマキシムと出会う。マキシムは1年前にヨット事故で前妻レベッカを亡くしていたのであった。彼女はマキシムの後妻として、イギリスの彼の大邸宅へ行く決意をする。多くの使用人がいる邸宅の女主人として、控えめながらやっていこうとする彼女だったが、かつてのレベッカづきの使用人で、邸宅を取り仕切るダンヴァース夫人にはなかなか受け入れてもらえない。次第に「わたし」は前妻レベッカの、見えない影に精神的に追いつめられていくが……。
レベッカ (映画) - Wikipedia
TOHOシネマズ宇都宮にて。午前十時の映画祭にて鑑賞(13本目)。
昨年読んだ本の中でもっとも好きな作品は米澤穂信さんの「ボトルネック」です。
これは、ある出来事をきっかけにパラレルワールドに飛ばされるという一見ありふれたお話なのですが、パラレルワールドの中には本来自分のいるべきポジションに別の人がいるというところが大きな特徴となっています。主人公は自分と同じ立場をこなす別人が配置された別の世界をのぞきみることになるわけですが、その世界は自分が住んでいる世界と比べるとさまざまな点において優れていることに主人公は気付き始めます。
そして違いの理由が、自分の代わりにいる人が自分よりも優れた人間であることに起因するということ、つまり自分の住む世界におけるボトルネックは自分自身だったということに気付かされるんですね...。
「自分より優れた自分という亡霊」
そんな存在について想像したことがなかったので、正直読み終えてすぐはかなり気が滅入ってしまいました。自分が誰かと比べられること自体が嫌なことだと思うのですが、その比べられる相手が自分より決定的に優れていて、しかもその優劣が実世界の変化という形で目に見える結果として見せつけられるというのは何とも参ってしまいます。
常に自分と誰かが比べられる状況というのはたまらないです...。
さて。本作「レベッカ」はお金持ちのところに後妻として嫁いだ女性が、前妻の影に苦しむというお話なんですがこれはまさに自分よりも優れた存在に苦しめられるというお話でして観ていて大変つらい気持ちになりました。
どれだけ「自分は自分なんだ」と思っていても、そこに比べられる相手が常に存在することはとても不愉快ですし、ましてその相手が自分よりもずっと優れていることが分かっている時はなおつらいんですよね。
ただ、人間が社会の中で生きていくということは、結局は社会の中に存在するなにかの役を割り当てられて生きていくということなんだろうなと思うし、それを拒否して「自分らしく生きる」ことは出来ないんだなということを思い知らされました。
あと、演出面ですごく感心したのは死角の作り方がとてもうまいんですよね。
観客から見えない部分をあえて作ることで、見えないことによる恐怖を感じさせたり、次の展開への予感を与えてくれていたのはおもしろかったです。こんなふうに死角を活かして物語に色を与えた作品というと、映画ではありませんが恩田陸さんの「黄昏の百合の骨」という作品を思い出してします。
見えないもので見えるものを彩る工夫。そういうアイディアをもつこと自体すごいなと思うし、それをただのアイディアとして留めることなく実際の作品にまで昇華していることには心底感心させられました。
- 作者: 米澤穂信
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- 作者: 恩田陸
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