ハンブルクでレストラン“ソウル・キッチン”を経営するジノス。ヘルニアで調理ができなくなったジノスの変わりに、頑固者の天才シェフを新しく雇うと彼が作る料理が評判に。そんなある日、兄のイリアスが刑務所から仮出所してくる。イリアスが店のウェイトレス・ルチアに惚れて、音楽好きな彼女のために盗んできたDJセットでジノスの大好きな音楽をかけながら、店はさらに繁盛しはじめる。すべては上手く回り始めたかに思われたが…。
『ソウル・キッチン』作品情報 | cinemacafe.net
(注意) 作品の内容に触れている部分がありますので未見の方はご注意ください。
宇都宮ヒカリ座にて。2011年上半期ベスト未見作品補完計画第五弾。
感情を揺さぶられる作品とか、すごくグッとくる作品とか、好きな作品と一言でいってもその実態はいろいろと違っているわけですが、わたしが一番好きなのは観終わったときに笑顔でいられる作品です。終わった時ににやにやしていられる作品がすごく好きなんですが、本作はまさに笑顔で観終えられる作品でして大層おもしろかったです。
幸せに全身を包まれるような気分で映画館をあとにしました。
本作が描いているのはレストラン「ソウル・キッチン」に関わる人たちの日常なんですが、これがまた普通の毎日なのにすごくおもしろいんですよ。まー、誰もがレストランを経営しているわけじゃないし、家族に服役囚がいるわけじゃないから普通というのはちょっと言い過ぎかも知れませんが、基本的には普通の範疇にくくっていいレベルの人たちの話なんですよ。
でも有無を言わせないくらいおもしろいんです。
分かりやすいところでいえば、腰痛治療のために裸にタオルを付けただけの状態で女性から腰のマッサージを受けていたジノスが思わず勃起してしまってその姿を女性に見られて恥ずかしがるというシーンの意外性は、下ネタだからというわけではなく心底度肝を抜かれてしまって思わず笑ってしまったのです。
脚本で大胆に冒険しているにも関わらず、それをまったく下品に感じさせずに思わず吹き出して笑ってしまうようなシーンにしてまう演出の巧みさ。
これは文字にするとなかなか伝わりにくいというか、わたしの文才ではなかなか伝えにくいんですけど、わたしの映画人生においてこれほど忘れがたい(いろんな意味で)シーンはありません。
細かいところについては例を挙げるときりがないくらいに気配りが練り込まれていて、終始楽しくてしょうがない作品でした。
それとこの作品を気に入ったもうひとつの理由は作品全体が人生の相似形となっていたことです。
最近「ツリー・オブ・ライフ」の感想でも書いたのですが、世の中の多くのことはそのスケールを変えてみてもまったく同じことが繰り返されていることがあります。それぞれのスケールで繰り返される出来事を抽象化してその時間スケールを変えてみると、どんな出来事も大抵同じことになるというのはわたしの経験とてらしあわせてみてもとても共感をおぼえます。
こんなに幸せな気分になれる作品を見逃したら死んでも死にきれないので観れて良かったです。
教えてくれたのが誰だか忘れましたが、今度スプモーニをおごってあげたいのでぜひ名乗り出てください。
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