「きみの友だち」読んだよ

きみの友だち (新潮文庫)

きみの友だち (新潮文庫)

友だち? 他人だよ、そんなの。でも特別な他人、大切な他人。嬉しいこと、つらいことがいっぱいあったから「友だち」の意味がわかった-。痛みや喪失を乗りこえ、少女たち、少年たちはやがて…。

http://www.amazon.co.jp/dp/410407506X


読み始めてしばらくは誰の視点なのかがいまいちわからなくて戸惑ったのですが、徐々に浮き彫りになる本作の主張には心の奥底から共感をおぼえ、そしてその伝え方のうまさに感動し、そしてこの物語につよく感銘を受けました。人は一人では生きていけないけれど、だからといって大勢の中に混ざって生きているから孤独じゃないかと言えば決してそうじゃないというのは本当にそのとおりだと思うし、そういう意味では「みんなぼっち」という造語にはなるほどと思わされたのでした。


本書は夏の100冊に選ばれていることからも分かるとおり、かなり多くの人から支持されている作品なのですが、ドラスティックな展開があっておもしろい!という種類の本ではありません。むしろ誰もが体験したことがあるんじゃないかと思うくらい普通過ぎる普通な日常が描かれていて、さらにそのことが多くの人からの支持を受けているという事実は、言い換えれば「友だちとの関係に悩むことは普遍的なこと」だと言っているのと同義だと思います。子どもというのはどこか自分だけは他の人と違う(いい意味でも悪い意味でも)と思っている節があって、そのせいで悩まなくていいことに悩み、それで傷ついてしまうことが多くあるようなきがします。なので、本書を読めば自分の悩みが決して特別なものではなく、むしろ普遍的で凡庸なものだと気付いて楽になれるんじゃないかなという気がしました。
少なくとも幼い頃のわたしが本書を読んでたら、もう少し気楽に生きられたんじゃないかなと感じました。小学生の頃のわたしに読ませてあげたい。


本書は今年の夏一番、もしかしたら年間ベストになりそうなくらいすばらしい作品でした。
文庫化の際に加筆されたという結末を含め、とてもよかったです。


ちなみに、本作は映画化もされているそうなので、そちらも機会を見つけてぜひ観てみたいと思います。

きみの友だち [DVD]

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