- 作者: 角田光代
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2010/11/19
- メディア: 文庫
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母と娘、母と息子、父と娘、夫と妻、恋人同士、それぞれの関係の微妙な変化―淡くもあり、濃密でもある人とのかかわりを描き、おかしみのなかに切なさがにじむ作品集。
http://www.amazon.co.jp/dp/4087748839
「あなたはマザコンよ、正真正銘の」妻に言われ、腹立ちまぎれに会社の女の子と寝てしまったぼく。夫よりも母親を優先する妻のほうこそマザコンではないのか。
これは本書の背面に書かれた本書に関する紹介文の出だしなのですが、このあまりのインパクトに「これはもう読まなきゃダメだろ」と購入を決めたほどの衝撃を受けました。冷静に読めば「いやいや、そんなこと言われたくらいで浮気すんなよ...」と思うのですが、ぱっと読んだ瞬間は「マザコンって言われたんだししょうがないよね」みたいなちょっとした納得感も醸し出していたんですよね。
では、なぜそんな風に感じたのかをあらためて考えてみると、「マザコン」というのは男性に対する蔑称みたいなところがありまして、それは多分に「ずっとあなたが好きだった」の冬彦さんのイメージが強いからではないかと推測するのですが、つまり男性側がこの「マザコン」という言葉で強烈に傷つけられたんじゃないかということが容易に想像できたからなんですよね。女性側もそれを知っててこの言葉を投げつけているのでしょうが、ぶっちゃけ男性が受けるショックというのはきっと女性が想像するよりも強烈です。
そのあたりの認識の差を考えると「事実と異なるのにマザコン呼ばわりされたんだし、まあ浮気されるのもしょうがないよね」みたいなことを想っちゃったような気もするのです。
と、いきなりどうでもいい話になってしまいましたが、本作はストーリー的にはつながりのない8編の短編集なのですが、母親との関係やら母親に関する疑問や悩みなどが絡められているところが共通しています。ただし、母親のことはあくまで主題ではなく、主人公たちの人生の中に何かしら影響を与えている母親のエピソードが織り込まれているのです。
よく考えれば、母親って生まれてきて最初に関わる人間なわけですから影響を受けてないわけがないよなあ...なんていう当たり前のことに思いを馳せてしまいました。
ちなみに本作の一編目である「空を蹴る」は非常にすばらしくて、何だかこういう経験をしていてそれを思い出させられているようなそんな気分になりました。