「ファミリー・ツリー」見たよ


美しい妻、かわいい2人の娘、そしてたくさんの親類とともにハワイで優雅な暮らしを送っていたマット・キング(ジョージ・クルーニー)は、妻の海難事故をきっかけに、妻が離婚を考えていたこと、そのことを友人も愛娘の長女・アレクサンドラ(シャイリーン・ウッドリー)も知っていたことに気づく。マットは自分の人生と、そして家族と向き合うことができるのか…。

『ファミリー・ツリー』作品情報 | cinemacafe.net

MOVIX宇都宮で観てきました。


ここ数日、仕事や趣味を含めたさまざまなことに対するモチベーションがグッとさがり、やる気というか、おおげさな言い方をすれば生きる気力みたいなものをごっそり無くしていました。振り返ってみるとこのテンションの低さは日々のアウトプットでもあるこのブログにも顕著に表れていて、いま改めて読むとその分かりやすさに思わず笑ってしまいます。


で、なんでこんなことになったのかというと、基本的にはいろいろとうまくいかないことがあったり嫌なことがあったりというのが大きいのですが、一番の理由はこの本を読んだ影響だと思っています。


この世の全部を敵に回して (小学館文庫)

この世の全部を敵に回して (小学館文庫)

戦争、テロ、狂信、犯罪、飢餓、貧困、人種差別、拷問、幼児虐待、人身売買、売買春、兵器製造、兵器売買、動物虐待、環境破壊−−。私たち人間は歴史の中でこれらのうちのたった一つでも克服できただろうか。答えは否だ。

この世の全部を敵に回して | 小学館

本書は人が生きることには何の意味もないんだということをとうとうと述べているだけなのですが、「そんなの当たり前だよ」と言い捨ててしまうことができないというか看過できない作品なのです。

というのも、実は私もこれと似たようなことをずっとずっと考えていて*1、似たような内容のテキストを書きなぐったことがあるのです。いまでもそれはブログの下書きにずっと温めているのですが、あまりにも高濃度な自分自身の内面が反映されているのが恥ずかしくてどうしても公開する気にはなれずにいたのです。


こういった「生きる意味」だとか「何で生きてるのか」なんていう正解のない問いに対して出来るのは、自分が納得できる答えを見つけてそれを受け入れることだけであって、本質的な答えは得ようがないことは分かっています。
ただ、それでも自己を肯定したいと思う気持ちからなのか、自分が生まれてきたことに理由を見つけたり必然性を感じたいと思ったり、つまり生きていることに何かしらの意味をもたせたいと思うこともあるのです。

ところが、繰り返しになりますが、実際には上でも書いたとおりそんなものは存在しません。そして本書は「その希望と現実のギャップ」をあらためて突きつける内容であったために読むと途端に気持ちが滅入ってしまったのです。


そんな鬱々とした気持ちに苛まれながら本作「ファミリー・ツリー」を観たのですが、生きていくモチベーションが大きく欠けてしまったわたしにはとても染みる作品でして大変よかったです。生きていることに意味があろうがなかろうが生きていれば日々いろいろなことが起きるわけで、そのひとつひとつと向き合い一喜一憂して生きています。
生きることに意味があるかどうかは分かりませんが、自分自身に起きた事実と向き合い、その中で自分が納得できる選択をして決断をしていくことだけが私にできる唯一のことなんだと感じたのです。


たとえ本人がどれだけ真剣に生きているつもりでも、寂しかったと浮気をされたり、子どもたちがバカをやったり、親族や友達とのメンドクサイ人間関係に煩わされたりすることはあります。でもそういっためんどくさいことに振り回されながらも、大事な人といっしょに過ごす楽しい時間に癒されたり、ささやかな幸せに満たされたりもするわけです。

そのいずれも時間が経てば忘れてしまうような出来事かも知れませんが、でもそのときに湧き上がった感情や衝動というのはいずれ忘れてしまうから無意味だと切り捨てられるようなものではないと思うし、そのひとつひとつの感情を味わうことこそが生きることなんだと思うのです。


そして、観終えて気付いたのですが「この世の全部を敵に回して」の中で述べられていたとおり、生きることには意味がないかも知れないし、この世はたしかに醜いのかも知れないけれど、でもそれはあくまで主語を「人間」にした場合なんですよね。そんな大きな主語で考えるのではなく、あくまで「私」を主語として考えれば生きることに意味も価値も見いだせるような気がしました。


あと、長女アレクサンドラを演じたシャイリーン・ウッドリーはとてもかわいらしかったですし、彼女の水着姿も大変素敵でしたが、それ以上にボーイフレンドのシドのバカなんだけどまっすぐなキャラクターはすごくよかったです。うちの娘たちがこんなボーイフレンド連れてきたら、むかつくけど嬉しいだろうなとしみじみ思わずにはいられませんでした。



(関連リンク)

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*1:もちろん本書の内容に比べると大変浅いのですが