「七瀬ふたたび」見たよ


人の心の中を読む能力(テレパス)を持つ火田七瀬(芦名星)は、その能力を人に知られることを恐れ、苦悩と葛藤の人生を歩んできた。ところが数年後、同じように不思議な能力を持つ少年・ノリオ(今井悠貴)や藤子(佐藤江梨子)、ヘンリー(ダンテ・カーヴァー)とめぐり合う。だが、彼らは一様に能力者の抹殺を図る組織に追われることに…。

『七瀬ふたたび』作品情報 | cinemacafe.net

MOVIX宇都宮にて。
超大好きな小説の映画化ということと、以前少し気になっていた芦名星が主演ということで楽しみに観てきましたが、主要な設定・登場人物は原作を踏襲しつつも、まさに劇中で描かれていたパラレルワールドのごとく物語が原作とは異なる新たな展開を見せてくれたのはとても面白かったです。
ただ、わたしは原作を何度も読んでいるのであの構成でも十分全体を思い描きながらストーリーを終えましたが、原作未読の人には話がちょっとややこしかったんじゃないかなという気はしました。未読の方にとってはどうだったんでしょうね。
こはちょっと気になりました。


また「心の中を読む」という非現実的な出来事を表現するにあたって使われた映像表現はなかなかユニークでして、これまたとてもよかったです。とは言え、率直に言うと文字を画面に次々と浮かび上がらせる表現は「ロード・オブ・メジャー」のPVのようでして、これをもって相手の意識を受け取っていると表現をするのはどことなく面白みがないとも感じたのですが、分かりやすさと直感的な理解を助けるという意味では悪くないなと思いなおしました。


ちなみに....。
この作品における一番の不満はノリオですねえ...。
私の思い描いていたノリオは、幼くてかわいいんだけれどテレパスであるが故に年齢以上に大人びた考えをしているというキャラクターだったのですが、あんな声だけはやけに子どもぶってるくせに顔と体格はおっさんみたいな子どもにやらせるだなんて正直がっかりしました。彼の演技の良しあしではなく、根本的にミスキャストだと思います。
映画は作品全体に対する感想が大事なのであってキャスト一つだけに文句を言うのは好きではないのですが、そもそもわたしがこの原作をすごく好きなのは「他人の心を読める」というシチュエーションが人の成長に与える影響をとてもうまく表現しているからなのです。その成長プロセスの格好の題材として描かれていたのがノリオだと確信していたわたしにとっては、このキャストがその大事な部分を軽んじている証拠のように感じてとても残念でした。


わたしは「子どもが大きく成長する一番のきっかけ」は、本音と建前、つまり相手の言葉に裏があったり言葉に出さない思いがあることを知るということだと思っています。普段の発言から考えれば絶対に思ってもいないだろうという言葉を平気な顔で話す大人を見たり、仲がいいと思っていた友だちが裏で悪口を言っているのを聞いたりしてそのことに大きなショックを受けることで、人間には二面性があることを学ぶのです。
ただ、そういうのって比較的成長してから気付くことが多いわけですが、テレパスである七瀬やノリオは物心がついたその時から、他人の心の中を常に突きつけられて人間の二面性と向き合うわけです。つまり、普通の人よりも早く知りたくもないことを知らなければならず、結果として七瀬のように年齢に不相応なくらいに世の中を冷めた目で見るようになるし、そしてノリオもまたそうなる気配をただよわせることで、他人の心が読めることの重さを表現しているわけです。
それが、あんなふうに成長してしまったノリオを出されるとね...。そこはすごく残念でした。


(関連リンク)


公式サイトはこちら