
- 作者: 奥田英朗
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/12/15
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 29回
- この商品を含むブログ (137件) を見る
ああ、なんてかわいいオジサン達なんだろう42歳課長、部下に密かにときめく。46歳課長、息子がダンサー宣言。44歳課長、営業から総務へ異動。課長さん達の日常。そこにある愛しき物語5編を収録!
Amazon CAPTCHA
人間を大別するもっとも一般的な括りとしては男女という性別での区別が挙げられますが、同性に区分される者同士であっても年齢によってその姿は大きく変わります。そもそも、生活圏や所属する組織が変わればそれに合わせて生活パターンが変わるのも当然ですし、生活パターンが変わればその中で生きる術というのも変わってくるわけで、これは生きる物に共通したことなのかも知れません。
本書は「おっさん」に分類される人たちの物語なのですが、これがすばらしく面白い作品でした。
「おっさん」という生き物は長く会社に属して生きているため、その組織の中で生きる術を身に付けてそれなりに自分の生き方に自信をもっているわけですが、その自信が傲慢さを育てたり、時に相異なる価値観を受け入れることを邪魔したりするわけです。
正しいのは自分。間違っているのは君。
でも実際のところ、正しさなんてのは相対的なものでしかないし、それこそ判断する人の価値観によっては逆転してしまうような代物です。
そのことにどこかで気づいているんだけど、でも長年貫いてきた自分の正義を今更ひっこめることも出来ずに頑なに自分自身の正しさを主張してしまうわけです。
わたしももう半分おっさんに足を突っ込んでいる30代男性ですので、こういう引っ込みがつかなくなる瞬間とかその時の気持ちがすごくよく分かるんですよ。認めたいけど認められない時のやるせない気持ち。その頑なな態度を支えているのはちっぽけなプライドだったり、見栄だったり、とにかく実際はどうでもいい些末なものなんですよね...。ああすごく悲しい。
そういうもの悲しさみたいなものがすごくよく伝わってくる作品でした。
勝ってはいけないケンカもあるということがわかっただけでもすごく大きな価値があったと思います。