「借りぐらしのアリエッティ」見たよ


魔法が使えるわけでもなく、妖精でもない“借りぐらし”の小人たち。14歳の少女・アリエッティもその1人で古い家の台所の下に暮らす。しかし、床下の小人たちには掟があった。それは“人間に見られてはいけない”ことだった――。メアリー・ノートン作「床下の小人たち」をスタジオジブリが映像化。

『借りぐらしのアリエッティ』作品情報 | cinemacafe.net

MOVIX宇都宮にて。


冒頭、翔が祖母の車で家の前に着き、家の全容を眺めているシーンに始まったアリエッティと出会うシークエンスのあまりの美しさ、語りの滑らかさにはこの感動を語る言葉が見つからないくらいの興奮を覚えました。そんなわけで、始まって早々に物語の世界に引きずり込まれてしまいましたが、その勢いのまま最後までスクリーンからまったく目がそらせずに90分の鑑賞を終えたのでした。
本作は軒下に住む小人たちと人間との出会いと別れの物語。


いつもジブリ作品を見て感じるのは「現実とアナザーワールドの融合」をとても丁寧に描いている作品だという点ですが、その点についてはこの「アリエッティ」はかなりジブリらしい作品だと感じました。日常を過ごす家の軒下に小人が住んでいたら...という絶対にないとは言えないし、もしかしたら...と思わず軒下をのぞきたくなるような設定だけでもはや傑作になる素地があることを感じるのですが、その素材を十二分に生かしてわたしが観たことのなかった新たな世界を創造して楽しませてくれました。


この世のどこかにあるかも知れないし、ないかも知れない。
ただ、「わたしがいままで見たことはもちろん、想像もしたことのなかった世界」というものを目の当たりにできることがこれほどわたしを幸せな気持ちにさせてくれるのかというのは本当に驚きだったし、見終わった後のこの多幸感というものに見終えて数日たった今も浸ることができます。


この作品でもっともわたしの心を揺さぶったのは、アリエッティと翔は決して結ばれることはできないという点です。
翔とアリエッティは出会ったその日から互いの存在に好意を抱くのですが、両者は体の大きさも違うし、翔は心臓が悪くて明日の命もわからない状態であるために決して二人がその好意を具体的な恋愛関係に持ち込むことはできないのです。あくまでその気持ちのつながりだけが両者をつないでいるというところに儚さを感じる一方で、でも、だからこそ二人の気持ちの確かさ、強さがものすごく確実なものとして感じられるのです。


他人とどうかかわっていいのか、どう自分の気持ちを伝えていいのかが分からなかった幼い頃の気持ちを呼び起こしてくれる、そんな作品でした。

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