「初恋温泉」読んだよ

初恋温泉 (集英社文庫)

初恋温泉 (集英社文庫)

二人が二人でいれる場所…。都会に生きる男女の憂鬱や倦怠感を鋭く捉える著者が「温泉に宿泊する男女」というテーマで描く五組の男女の物語。

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実在する温泉を舞台に繰り広げられるさまざまな立場にある人たちの恋物語
読み終えてまっさきに思ったのは「これを書くためにいろんな温泉に取材と称して行ったんだろうな....」とか「それはいったい誰といったんだろう...」という、非常にどうでもいいことでして、自分の発想のさもしさに嫌気がさしました。アホだ...。


温泉にはここしばらくもう何年も行ってないのですが、あの非日常的な空間は大好きです。
たくさんあるけれどどこも似たり寄ったりの商品を置いてあるお土産物屋とか、点々と配置されている足湯などのちょっとした休憩所なんかすごくいいですよねー。こういうささやかな特別さがすごく魅力的に感じるのですが、それ以上にわたしを魅了するのは見も知らない人とも挨拶程度の会話をしたくなる、というか思わずしてしまうあの不思議な空気なんです。登山をしたりしたときもそうなんですが、見知らぬ人とも思わず会話をしてしまうあのユルユルとして奇妙な空間ってものすごくおもしろいと思うんですよね。その場にいるだけでいろんな人に心を許してしまうような解放感を味わえるというのは、温泉の魅力の一つですよね。


本作はそんな温泉のもつ魔力によって、日常とはちょっと違う経験をしたり、その経験が日常にも影響を及ぼしていくようすがとても丁寧に描かれていて非常におもしろかったです。


ちなみに一番好きなのは表題作の「初恋温泉」。
好きな人にはいいところばかり見せたいと思うのは当然の心理ですが、でも一緒に暮らしていくのであればいいところだけでなく悪いところもダメなところも全部見せる度量が必要だよなーとしみじみ感じました。たしかに、いつもかっこつけててその裏を見せようとしない人とは結婚生活なんてできないよなーと感じましたが、でもそれってすごく寂しいことですよね。。。