「告白」読んだよ

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

我が子を校内で亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年を指し示す。ひとつの事件をモノローグ形式で「級友」「犯人」「犯人の家族」から、それぞれ語らせ真相に迫る。選考委員全員を唸らせた新人離れした圧倒的な筆力と、伏線が鏤められた緻密な構成力は、デビュー作とは思えぬ完成度である。

http://www.amazon.co.jp/dp/4575236284

再来週からこの本を原作とした映画が公開される予定でしたのでそちらを観てから読もうと思っていたのですが、どうしても機内で読みたいと思ったのでおもわず手を伸ばしてしまいました。乗って早々に読み始めたのですが、あまりにおもしろくてあっという間に読みきってしまいました。昨年の本屋大賞受賞作品という話題性にたがわない、とてもユニークな構成でありながら読みやすくてさらに好奇心もあおってくれる非常に楽しい本でした。


本作はある事件とその顛末に対する5名の独白で構成されており、各自が自らの立場から見た事実を淡々と述べていきます。
とてもおもしろいと感じたのは誰もが真実を語っているつもりであるということと、そしてそれは決して真実ではないということです。以前、恩田さんの著書である「Q&A」という本を読んだときにも感じたのですが、どんなに自分が見たことを思い込みを交えずに正確に話しているつもりでも、結局そこには話し手の主観が多少なりとも混じってしまい純粋な事実を伝えることはかなり難しいのです。
本書においても各自が話す内容には間違いや嘘が混じっていて全員の話がすべて同じになることはありません。
全員が知っている共通の出来事に対する見方や認識の違いや、特定の人しか知らない隠された事実。そういった情報が積み重なったときに見えてくるこの事件の本質と顛末は非常にエキサイティングで最後の最後まで楽しく(というのは語弊があるかも知れませんが)読むことが出来ました。


主観の排除の難しさと、人は目にはいったものを見ているのではなく見たいものを見ているだけだということを思い知らされる一冊でした。わたしはこの本の終わり方が大好きですし、読み終えて映画もとても楽しみになりました。


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