「Nのために」読んだよ

Nのために (双葉文庫)

Nのために (双葉文庫)

超高層マンション「スカイローズガーデン」の一室で、そこに住む野口夫妻の変死体が発見された。現場に居合わせたのは、20代の4人の男女。それぞれの証言は驚くべき真実を明らかにしていく。なぜ夫妻は死んだのか?それぞれが想いを寄せるNとは誰なのか?切なさに満ちた、著者初の純愛ミステリー。

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いまやっているドラマの方は観ていませんが、なんとなくおもしろそうだったので読んでみました。


内容は著者お得意の「ある事件をいろんな人から見た視点で切り取ることで描く」という構成でして、同一の事象であっても別々の人から見たらぜんぜん違うよねという羅生門チックな内容が印象的な作品です。タイトルの「Nのために」とあるとおり、登場人物全員が名前にNの付く誰かのために何かをささげるのですが、おもしろいのはこの作品に出てくるすべての人は名前にNが付くのです。

つまり最初の方では誰が誰に対してそういった想いを抱えているのかが分からないというところが読み手の興味をひくのです。

さらに「究極の愛、それは罪の共有」というのが本作のひとつのテーマとなっているのですが、このこと自体には共感も理解もできませんがひとつの考え方としてはすごくおもしろいなと。というのも「罪の共有」というと共犯関係を築くことを想起するのですが、そうではなくて相手の抱えている罪を相手に知られないようにいっしょに抱えていくことが共有なのだそうで。

たしかに共犯者になるだけよりはそっちの方が愛だよなーなんて思いました。


それにしても、湊さんの作品はやたらと映像化されることが多いような気がします。
作品がおもしろいかどうかは人それぞれでしょうが、映像化しやすいかどうかという点について言えばしやすいのかも知れません。とくにこの「Nのために」に関して言えば、ドラマにぴったりな構成だと思うし、改めて読み直すと映像化する前提の元に書かれたのではないかという気さえしてきます。