- 作者: 斉藤守彦
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2009/11/28
- メディア: 単行本
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シネマコンプレックスの拡大で、国内の映画館(スクリーン)は飽和状態だ。一見華やかに見える映画産業だが、いまや邦画バブルがはじけ、映画館1館当たりの売上げは年々減んじている。配給会社も興行会社(映画館)も消費者も……実は誰も得していない、映画館入場料金=1800円の理由を、映画ジャナリスト・斉藤守彦が解き明かす。
http://www.amazon.co.jp/dp/4478011346/
わたしが映画を観るようになったのは2006年なのでもう4年ほど前になりますが、それ以前の10年で映画を観に行ったのは片手で足りるほどの回数しかありませんでした。わたしは落ち着きのない性格なので2時間座っていられないなど、いろいろな理由はありますが一番大きな理由は「2時間で1800円取られるのは高いから」というものでした。
その頃のわたしの趣味は、服を買うこととゲームくらいだったのですがそのいずれと比べてもコストパフォーマンス的に映画に勝てる要素はひとつも無かったのです。
例えば服は一着2万円くらいしたとしても一度買ってしまえば手元に残りますし何度も着られますし、日常的に服を着ないことはありえないことを考えると生活必需品への投資とも言えます。
またゲームについてもコンシューマー向けのゲームは買えば手元に残りますしゲーム一本で何十時間と遊ぶことも出来ますし、アーケードはもっと短時間ですが安く楽しむことが出来るのです。物によるでしょうが大体はコストパフォーマンスが悪くありません。
つまり「お金の使い道としてあえて映画を選ぶ理由がなかった」わけです。
その後、徐々に映画のおもしろさに触れて感銘を受けたわたしは「趣味は映画鑑賞です」と自信をもって言えるほど映画が好きになったわけですが、それでもやはり入場料金が1800円ということについては非常に高いと感じています。もちろん映画を安く観る方法はたくさんありますが、そういったサービスなしで映画を見るときの料金自体が何とか安くならないのかと思っていました。
そんなわたしの疑問をそのままタイトルにしてしまったのが本書でして、タイトルを見ただけで買うことを決めてしまいました。
本書は映画の料金がどのように変わってきたのかという歴史をまとめた上で、なぜ安く出来ないのか?ということを映画業界の事情とともに紐解いてくれます。わたしなどのような新参者は、昔から映画の料金はずっと高かったに違いないと思い込んでいたのですが、実はそうではなくて戦時中に映画に対して入場税という税金(しかも税率が150%!!)がかけられたことが価格高騰の始まりであることを知って非常に驚いてしまいました。その後の業界の流れを見ると「1800円はしょうがないのかも知れないなあ....」と思ってしまいそうになるのですが、著者はそれに対してさらに鋭く踏み込んで価格がなぜ安くならないのか、そもそもただ安くして人を呼ぶのではなくて興行側(映画の場合は映画館)がサービス向上に努めるべきではないのかとさらに切り込んでいくのです。
テレビやDVDレンタルがこれだけ普及した現在において、わざわざ映画館に足を運ばせるにはどうしたらよいのかといったことについて改めて考えるよい機会になる一冊でした。興行収入や入場者数を年ごとにまとめている点は資料としても非常に価値があるし、何よりこういった歴史的な経緯を知ることが出来てとてもおもしろい本でした。
普段何気なく観ている映画、そしてその場を提供している映画館の実態を知ることが出来るすばらしい内容でした。普段映画館で映画観ている映画好きにはおすすめです。