「「文系・大卒・30歳以上」がクビになる」読んだよ

「文系・大卒・30歳以上」がクビになる―大失業時代を生き抜く発想法 (新潮新書)

「文系・大卒・30歳以上」がクビになる―大失業時代を生き抜く発想法 (新潮新書)

派遣切りの次に来るのは、かつてのエリート正社員たち、すなわち「文系・大卒・30歳以上」のホワイトカラーの大リストラである。低成長が続き、就業者総数が減り続けてきたここ十年でも、ホワイトカラーは「本当は必要のない仕事」を作って水ぶくれをし続けてきたからだ。「数年以内にホワイトカラー一〇〇万人がクビになる」大失業時代に何が起きるのか。そしてどう備えるべきなのか。生き残りの処方箋を提示する。

http://www.amazon.co.jp/dp/410610332X

本屋で見つけたときに、このタイトルは煽り過ぎだろう...と思いながら手に取ったのですが、買ってきて自宅で読み始めたら本文の内容もタイトル並みに煽り気味な内容でしてそのギャップの無さにおどろかされました。
新書を買ったときによくあるパターンとして「釣りタイトルに釣られて買う」→「読んだら普通でがっかり」という黄金のパターンがあるのですが、本書はその悪しきパターンには決して当てはまりません。タイトルに負けないくらい過激な内容は決してこのタイトルを釣りタイトルとは呼ばせないだけのインパクトがあります。
ホワイトカラーに分類される仕事をしている人はみなこの本を一読して、自分がやっている仕事を見直してみるのもよいと思います。


本書の内容についてですが、著者の主張は至ってシンプルで「生産効率性の低いホワイトカラーがたくさんいるのでそれをリストラしましょう」という流れが3年以内に起こるよというものです。つまり、本書のタイトルにある「文系・大卒・30歳以上」というのはリストラが進められたときにまっさきに対象になりそうなホワイトカラーの代表格をあらわしていて、より多くのホワイトカラー職の人に読んで欲しいという願いをかなえるためにつけられたタイトルであることが感じられました。
「文系・大卒」というのはホワイトカラーに属する仕事に携わっている人間の属性の中からもっとも多数派となりうる集合をさすために選ばれた言葉であり、「これって自分のことかも...」と読み手の興味に引っ掛かりを与えることを目的にに選ばれた単語なのです。
また、30歳以上という制限も「30歳未満の人間は主に日常の運用業務を担当することが多いので必要なんだけど30歳以上は...」という一般的な状況から導出されたものであり、具体的に30歳以上という部分にクビになるという根拠があるわけではありません。センセーショナルさを演出する小道具なのです。


そして本文では、なぜホワイトカラーがクビになりそうなのかという理由付けがたくさん説明されていて、読んでいると本当に3年以内にこのような動きが起きるのではないかという説得力を感じます。ホワイトカラーに対する厳しい言葉の多い本書は実際にホワイトカラーに属する仕事をしている人間が読むと決して気分がよいものではないのですが、それでもうなずける部分はたくさんあるし、思い当たることも決して少なくなくて、煽られていることで不愉快な気分になったりすることはありませんでした。
無駄に危機感を煽っているのではなく、それなりに根拠を示しているわけですから読み手としてもとても受け入れやすいという印象を受けました。


本書の中でわたしが一番印象に残っているのは以下の部分です。

それは、「ホワイトカラーが、自らを会社において必要な人材であると決め付けていること」である。最初から、社内における自分の存在を肯定しているのだ。
 そして、自分が存在している以上、何かしら意味・目的(「使命」と言ってもよい)があることをやろうとする。本当に企業にとって意味のあることをするのであれば問題はない。しかし、ホワイトカラーの場合、とりあえず自分の存在をアピールできることであれば意味・目的が不明瞭でもやってしまい、あとからその意味・目的kを取り繕おうとする人が少なくない。
 つまり、ホワイトカラーは自らの「存在」と仕事の「意味・目的」とか逆転してしまっているのだ。
 ホワイトカラー以外の仕事をしている人には、このような「存在」と「意味・目的」の逆転は見られない。「意味・目的」があるから、必要な仕事が生まれて、部門が構成される。「意味・目的」がないのであれば、他の職務への配置転換が行われる。売上げやコストに密接に関わっている職種は、「意味・目的」と「存在」との結びつきが単純明快であるから、それらが逆転することはない


55ページより抜粋


転職することはよく考えていますが、自分がクビになることなんて考えたこともありませんでした。
自分の仕事がどうとか考えたこともないのにクビにならない自信があるだなんて、自分が会社に必要とされているのは当然だという意識があるということにいですから図々しいというか何というか...。心のどこかに自分だけは特別だという意識があったということを思い知らされた気がします。


おれ、クビになったら次は何の仕事をしようかな。