- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/08/12
- メディア: 文庫
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少女の遺体が住宅街で発見された。捜査上に浮かんだ平凡な家族。一体どんな悪夢が彼等を狂わせたのか。「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼等自身の手によって明かされなければならない」。刑事・加賀恭一郎の謎めいた言葉の意味は?家族のあり方を問う直木賞受賞後第一作。
http://www.amazon.co.jp/dp/406276444X
この歳(31才)になって、自分を取り巻くさまざまなことが20代の頃と変わっていることに気付き始めました。
20代の頃は自分のことを主軸にして人生設計をしていましたが、最近では親や親戚との関係も無視することが出来なくなってきていて、「何だかめんどくさいなあ」と感じることも少なくありません。
離れて暮らしていることをよいことに、いろんな面倒ごとを忘れたふりをしながら毎日を過ごしているたわけものなのですが、両親や祖母が体調不良で入院したり、60歳だから仕事を辞めたよなんて話を聞くと、少しずつ自分が何かしなければいけないんじゃないかなという思いに駆られるのです。
本作で物語の中心に描かれている前原家は世の中のもっとも中庸に位置していそうなごく普通の家庭環境であり、そしてわたしが思い描く将来の自分自身の姿はこの家の世帯主である前原昭夫という普通のおっさんに重なります。もう読みながら怖くなるくらい完全に重なるのです。
そのため、最初から最後までどうしても他人事とは思えず、読み終えたときには力が抜けると同時にほっとしてしまいました。
本当に怖かった...。ホラー映画なんかよりよっぽど怖いです。
先日「レイチェルの結婚」を観たときにもそう感じたのですが、家族というのは最も身近にいるけれどやはり理解出来ない部分というのはたくさんあります。「他人のことは理解出来なくて当然」と割り切っている人でも、でも家族なら...と思ってしまうことってあると思います。それは幼い頃から世話をしてきたという親の自負、もしくは長年一緒に生活しているという事実からくる自信なのかも知れませんが、でも全部を理解できる他人なんて存在するわけもななくて、やはり分からない部分があって当然なのです。
なのに、上記のような自負や自信が原因で、家族を理解出来ないことをつらく、そして苦しく感じてしまうんですよね。
家族だからこそ繋がりを保てる関係もあるし、家族だからこそ許せないこともある。
そんなことを平凡な家庭を舞台にして描いたすばらしい作品でした。すばらしかったけど、本当に怖かったのでもう読みません。