スラムドッグ$ミリオネア


インドのスラム街で育った孤児のジャマール(イルファン・カーン)は、世界的な人気番組「クイズ$ミリオネア」で、あと一問で全問正解という状況にいた。だが、無学の少年が答えられるはずないと、司会者には疑われ、賞金の支払いを渋るTV番組会社の差し金で警察に連行され、尋問を受けることになる。一体なぜ、ジャマールは100ドル札に印刷された大統領の名前や、ピストルの発明者を知り得たのか…? 警察の尋問、クイズが続く番組、そして彼の子供時代の記憶を行き来しながら、貧富の差が混在するインドを生き抜いた少年の人生を描く。

『スラムドッグ$ミリオネア』作品情報 | cinemacafe.net

TOHOシネマズ宇都宮にて。


さすがアカデミー賞作品賞受賞作品だけあって、レイトショーにしては珍しく満席になっていました。とは言っても150席にも満たないほどの大して広くもないシアターでの上映でしたので人数的にはさほど多かったわけではないのでしょうが、それでも洋画+レイトショーでこんなに人が入っていることには驚いてしまいました。
先日の「おくりびと」もそうですが、この手のアワードの影響って私が想像していたよりも強烈なようです。


さて。大きな賞を受賞した作品ということで話題になってしまい、そのせいで観る前から「どれだけ面白いんだろう」とハードルが上がりまくっている本作ですが、そんなハードルはチョイチョイ越えてしまうほどすばらしい作品でした。120分まったく身じろぎひとつせずに見入ってしまうほどおもしろかったです。


なぜジャマールはクイズの答えを知りえたのか。
この問いこそがこの作品の一番の楽しみとも言える部分だったわけですが、これについては彼がクイズ番組で回答を重ねる様子が映し出されるのと合わせて、ジャマールがその答えを知るに至った経緯となる「過去のある出来事」についても、彼の独白という形で観客に示されます。
そしてジャマールの人となりの描き方がとてもうまいのも影響して、その内容は決してジャマールの口だけのデマカセなどではないというのも言外に伝わってくるのです。ジャマールは決していんちきをしていたわけではないという説得力がこの作品が成功した一番の要因ではないかと思うほど、ジャマールの人物像の描き方がとにかくすばらしかったように感じています。


そしてこの部分がとても印象的だったのですが、ジャマールが答えを知るに至った経緯と言うのはどれも彼自身が大事な何かを失った経験と結びついています。そしていずれの出来事はまた、スラムという場所の恐ろしさを生々しく描くことになっていてその凄惨さには身震いせずにはいられませんでした。
彼はただ答えを得たわけではなくて多くのものと引き換えに得ていたことを知るにつれ、彼の正解をもろ手を挙げて喜ぶことは出来なくなります。この感覚は番組の視聴者が正解を重ねるごとに熱狂していくのとは対照的でして、冒頭ではあたかもその場所にいるような臨場感を感じて作品の中の世界と一体感を感じていたのに、徐々にそれが崩れて作品全体を冷静に見られるようになる感覚というのも不思議だなと思ったのでした。


そして後半になって見えてくる「ジャマールはなぜこのクイズ番組に出たのか?」という部分が見えてきたときにはこの作品がなぜここまで高く評価されたのかと言うことに深く納得してしまいました。


あと音楽もすばらしくよかった!!
インドの街中にじっさいに流れていそうな音楽が映画の中からあふれ出てきていて、わたしもその町のメンバーとしてそこに住んでいるような臨場感を感じながら鑑賞しました。こういう音の違いってメロディそのものの違いもあるのでしょうが、やはり楽器が違うのが一番大きな気がします。この音楽のすばらしさをうまく言葉に出来ないのがもどかしいのですが、この作品が彩る大きな要素として音楽がかなり大きなファクターになってたということだけは書き記しておこうと思います。
加えて、エンドロール直前の駅でのダンスシーンもチョーかっこよかったのでこれも必見です。


最初に書いたとおり、期待していた以上にすばらしい作品でした。


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