秘訣は官民一体 ひと皿200円の町おこし

秘訣は官民一体 ひと皿200円の町おこし (小学館101新書 19)

秘訣は官民一体 ひと皿200円の町おこし (小学館101新書 19)

きっかけは、餃子購入額日本一という昭和62年の総務庁(現・総務省)の家計調査でした。そこに最初に注目したのは、市の職員たちでした。当時、宇都宮は、「名前が知られていない」という悩みをかかえていました。そこで、「餃子で宇都宮のPRをする」というプロジェクトが、たった5人の市の職員から始まりました。官の主導で始まった企画が民のボランティアと融合して発展していく、このプロジェクトの成功を検証すると、「町おこし」の成功のキーワードが数多く見えてきます。

http://www.amazon.jp/dp/4098250195

わたしがまだ学生だった7年ほど前。
山形市に住んでいたわたしが、栃木県というか宇都宮市に対してもっていた印象は「ヤンキーが多そう」と「餃子の街」という2点でした。ステレオタイプといわれればまったくそのとおりのイメージなのですが、でもこれらは今も昔もよく言われている宇都宮市を構成する2大要素であり、これについては7年間住んだ今でも間違っていないなと実感出来ますし、むしろ今はその認識をよりいっそう深めているほどです。


話を昔に戻しますが、わたしが初めて宇都宮を訪れたのは今いる会社への就職が決まって本社を見学するためでした。その時は山形から新幹線に乗って行ったのですが、新幹線を降りてホームに降り立ち、そこから改札に向かうその階段の途中から餃子のにおいがしはじめたことにものすごく驚きました。まったく冗談みたいな話ですが一切の誇張なく本当の話です。あまりに予想外な展開に思わずひとりでクスクス笑ってしまったのですが、でも同時に「本当に餃子の街なんだなあ」と感激したのも懐かしい思い出です。


今では「街の顔」として餃子が扱われていることが当たり前になっていますし、私のようにここ10年以内に県外から引っ越してきた人にとっては昔からそうだったと思ってしまいがちですが、実はそうではないのだと教えてくれたのがこの本です。
本書では、宇都宮市自体を有名にしたいという市の職員の想いと宇都宮市内の中心市街地(オリオン通りあたり)の凋落を何とかしたいと人々の想い、それらがどのように作用して現在のようなイメージ戦略を作り上げてきたのかということが事細かに記載されています。今日に至るまでの道のりは決して容易ではなかったと思いますし、ここに書いてあることが全てではないでしょう。そして本書にも書かれているとおり、やり方についていけないと反発した人も少なくないとは思います。でも全ての人が納得出来るものが難しいからといって全てを諦めるのではなく、出来るところだけでもまずはやってみようというその前向きな姿勢が今のこの成功を呼び込んだことは間違いありません。
人々の理解を得るのが難しい状況から、少しずつ、でも着実に「餃子の街」というイメージを作り上げていく様子を本書から知ってものすごく胸が熱くなるような思いを抱いたし、あって当然だとさえ思っていた「餃子の街」というイメージ作りにどれだけ多くの労力が払われていたのかと言うことを知ることが出来たのは本当によかったです。


県外に住む友人(秋田や青森、山形や都内かな)がたまに遊びに来てくれるのですがその時にはいつも餃子を一緒に食べるのですが、みな餃子を食べるだけで「宇都宮の餃子が食べられた」ととても喜んでくれます。遠くから来てくれた友達にそうやって喜んでもらえると迎える立場としてはものすごく嬉しいわけで餃子という名物があってよかったなといつも心から思っていましたが、この本を読んでその感謝の気持ちはより大きくなりました。


この宇都宮餃子とは対照的に、一過性のブームに振り回された人々を描いた「UDON」という映画があったのですが、この本を読みながら宇都宮があのようにならなくてよかったなと思わずにはいられませんでした。


UDON スタンダード・エディション [DVD]

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