夕陽が輝き、山肌を金色に染める秋の午後。学校からの帰り道、少女・リラ(ベルティーユ・ノエル=ブリュノー)は森の中で美しいきつねに出会った。柔らかそうなとび色の毛に覆われた姿、そのつぶらな瞳に魅せられたリラ。きつねにテトゥと名づけた彼女は、警戒心から人前になかなか姿を現さないテトゥに再び会うために、毎日森に通うようになる。やがてリラの想いに応えるように、テトゥも少しずつリラとの距離を縮めていくのだが…。小説「星の王子さま」にある“ キツネの章”と監督自身の体験を基に、美しい風景と生命力あふれる動物たちの映像を融合、少女とキツネの出会いと別れ、そして絆を綴った切ない物語。『皇帝ペンギン』のリュック・ジャケ監督初フィクション長編作品。
『きつねと私の12か月』作品情報 | cinemacafe.net
[注意]
ネタバレというほどではありませんが、ストーリーの展開に触れているので未見の方はご注意ください。
MOVIX宇都宮にて。
きつねに想いを寄せる一人の女の子の物語。この間観たばかりの「ミーアキャット」同様、どうやって撮ったのかと首をかしげたくなるような映像ばかりでした。野生の狼に追いかけられるスピード感あふれるシーンや、リラとテトゥが距離を近づけるシーンは、もしかしてCGなんじゃないかと疑ってしまうほどでして、ぜひ撮影風景を観てみたいという衝動を抑えられません。もしDVDで販売される際に特典映像として撮影風景を入れてくれたら思わず買ってしまいそうです。
そんな魅力あふれるシーンが多い中で特に私が一番好きなシーンはこちらです。
予告でも流れていたシーンだったので期待して観ていましたが、いよいよこのシーンが出てきた時はあまりの嬉しさにひとりで無駄に興奮してしまいました。ものすごく美しい風景の中に逆光で影のように見えるリラの歩く姿がとても美しくて、ここだけ抜き取って写真にして部屋に飾りたいほどです。
また、このシーン以外でも美しい遠景の中をリラが歩き回るという撮り方が多かったのですが、↑のシーン以外だとオープニング直後にリラが「自分のちっぽけさ」を実感した山頂にたどり着いたシーンがとても印象的でした。
で、ストーリーの方についてですが前半はリラとテトゥの距離が近づくのに要した時間が長かったということを除いておおよそ予想どおりでしたが、後半というかラスト付近の展開は意外でした。突然テトゥを所有しようとするリラの行動と、その後のテトゥの変化。そしてこのことからリラが学んだ「好き」と「所有はちがう」のだという教訓。好き嫌いに関わらず互いに相容れない者同士が共存するためにはどうすべきなのかという点についての答えを得るに至るプロセスが自然なかたちで提示されていて面白いなと感じました。
死別という分かりやすい展開かと思っていたので余計意外性が感じられてよかったです。
それにしても登場人物が極端に少なくて、まともに出ていた人間はリラひとりという徹底ぶりにはとても驚かされました。
観ている人が徹底してリラの表情や考えにスポットライトをあてられるようにという試みなのかなと思うのですが、リラの表情の機微や心境の変化が細部に渡って感じられてとてもよかったです。わたしなんて、両親が出てきたら絶対そちらの視点寄りで観ちゃいますから余計そう感じます。
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