犯罪を犯すかどうかのその一線

走行中の電車内で、乗客の女性の下着内に手を入れ、乳房をもむなどしたとして、強制わいせつの罪に問われた男性被告(31)の初公判が27日、東京地裁で開かれた。

 黒いスーツに濃紺のネクタイを絞め、被告人席に腰かけた被告は、拳を握りしめたまま、終始うつむいていた。傍聴席の最前列には、家族と思われる男性2人が座っていた。すると、そこに生まれて間もない赤ちゃんを抱いた女性が現れ、証人席に腰を下ろした。被告人の妻だった。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/081028/trl0810281410008-n1.htm

理由はなんであれ、痴漢を繰り返したことは最低だと思いますし、そのことについては異論のある人はいないと思います。この男性がしたことは最低だし相応に罰せられるべきだというのは当然のこととして、でもこの男性に対してわたしは何となく他人事とは思えない、そんな印象を受けました。


わたしも今となっては結婚もして子どももいる身ではありますが、そのどちらも、決意を固めるまでは本当に大変でした。
通常マリッジブルーとかマタニティブルーっていうのは女性特有のものと思われがちですが、恥ずかしながらわたしはこのどちらも経験しました。
結婚式直前には「結婚式なんてやりたくない」とか「結婚してしまったら、もし上野樹里とか宮崎あおいに告白されても付き合えない」なんていう不安が日々頭の中に浮かんでは消えていき、どうやってもその不安が消えない時は結婚式を先延ばしにしてしまおうかななんて考えて過ごしていました。


そんなブルーを乗り越えて結婚をした一年後。今度は上の子どもが生まれる直前になると親になることに対してつよい不安を感じ始めました。嬉しいとか楽しみという気持ちに比べたら、そりゃ微々たる不安かも知れませんが、でもどうしたってその責任の大きさにもう逃げ出したい気持ちでいっぱいでした。「ちょwwwおれが親ってありえないwww」とか言ってふざけてみたりするわけですが、自信がもてないのは本当も本当、ガチンコでして夜寝る前なんか眠れないほど考え込んでしまう時もあったのです。
実際に子どもが生まれてしまったらそれはそれで全然余裕なわけでして、余裕というのはさすがに言い過ぎですがまあ想像していたほどひどい状況になることはなくて、過ぎた今となっては不安を感じすぎだったなと。ま、今だから言えることなんですけどね...。


結婚にしろ出産にしろ、他人の人生も背負う必要が出てきたときにはプレッシャーを感じて当然です。
またこういうことを書くと常時ブルーな気持ちを感じていたと思われるかもしれませんが全然そんなことはなくて、新しい生活がすごく楽しみだと感じていた一方で、たまにこういう気分が頭の中を席巻するときもあったという状況だったのです。


話を元に戻しますが、環境が変わることへの不安ってわたしに限らず多くの人に共通したものだと思いますし、たぶん今回のこの男性も似たような不安を抱えていたんじゃないかなと感じました。こういった不安はいずれストレスになるし、そのストレスがうまく発散出来ないケースが今回なのではないかなと。幸いにもわたしはストレスの発散がとてもうまいのでこんな犯罪を犯さずに済みましたが、もし当時のわたしに仕事上での問題や家庭内の問題に起因するようなストレスが加わってしまったら果たして無事に過ごせたのかどうかは自信がありません。


繰り返しますが、だからといってこの男性を擁護するつもりはありません。この人は最低ですし、罰せられるべきです。
ですが、わたしの拙い経験をとおして今回の事件を見ているとこの男性が抱えていた寂しさというか苦しさが見え隠れしてしまい、とてもやるせない気分になったのです。犯罪を犯す人とそうでない人の境目なんてあってないようなもんだなと思わされた事件でした。